情報をアップデートする その2の2 [シリーズ作文]

THE FOUR HORSEMENの巻、後編です。



オリジナルラインナップ崩壊後、
HaggisはLITTLE CAESARのRon YoungにTim Beattieという歌い手を紹介されます。
この人は歌だけでなくハーモニカやラップスティールの演奏も出来た点が買われ
バンドの新たなフロントマンの地位を獲得しました。
Haggisは新編成でのアウトプットを試すべくDimwitを招集しますが
残る2人はこのラインナップへの関与を否定、
代わりにRick McGhee(ギター)とDuane D. Young(ベース)がリクルートされました。

'92年の後半と翌'93年、バンドは新しいベクトルの確認に時間を費やしたようです。
Tim Beattieの参加によってバンドサウンドがより泥臭いブルースに向かったのは明白で、
残念なことにオリジナルの面影は結構薄れちゃったのね。
こうした中DimwitとRick McGheeが脱け、Haggisは新たな補充を余儀なくされます。
THE CULTの元同僚、Lez Warnerをドラムに据えて暫くは4人でやっていたようですが
今一つ物足りなさを感じていたHaggisは
4人編成のリハーサルテープをDave Lizmiに送り、みごとバンドに復帰させています。
ただこの編成も長くは続かず、最終的にはTim Beattieの友人である
Mike Valentineが穴を埋めることになりました。

このように出入りの激しかった新編成は'94年の秋頃までバタバタやっていたようで、
この間(Lez Warner参加以降)に録音された音源をまとめたのが

Daylight Again / 2009
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10曲収録。うち9曲のリードギターはDave Lizmiによるものです。
Tim BeattieのボーカルはFrank C. Starrよりもかなりスムーズで癖がなく、
正直特筆すべき点はあまりないように思います。
しかし唯一Mike Valentine入りの編成で録音された
11分にも及ぶ〝Amazing Grace”は鬼気迫る名演と言って差し支えなく、
これが残ったのは勿怪の幸いでした。

結局この編成によるFOUR HORSEMENが陽の目を見ることはなく、
Haggisはロックンロールの世界から離れることを決意したのです。



一方、Dave LizmiはL.A.でFrank C. Starrの身辺が落ち着くのを待って
別途THE FOUR HORSEMENの復活を画策しました。
Pharoahなるベーシストと、ドラマーにはRandy Cooke
(Lee AaronやRik Emmettのソロなどに参加…お察しの通りカナダ人)を迎えて
'95年の夏に録音されたのが

Gettin' Pretty Good...At Barely Gettin' By... / 1996
frhsm3.jpg

アルバム冒頭、Johnny Winterの〝Still Alive and Well”
(曲を書いたのはRick Derringerだけど)のカバーが
ガツンと決まった時点でHaggisには申し訳ないけれど
やっぱコレだよな!って思っちゃいますねぇ。
結局はFrank C. Starrの歌こそがTHE FOUR HORSEMENの
アイデンティティそのものだったことをいみじくも証明しちゃうんだもん。
…いや、もっと正直に言うとFrank C. Starrの歌声も急激に渋さを増していて
デビューアルバムにあった艶々しい輝きは、実はもう無かったりするのです。
これ、あんまり認めたくないんだよね、個人的に。

そんな本作は'94年9月に薬物の過剰摂取で亡くなった
バンドのオリジナルドラマー、Dimwitに捧げられたアルバムであり、
そしてまたFrank C. Starrの遺作でもあります。

アルバム完成後の'95年11月、
サンセットストリップでバイクを運転していたFrank C. Starrは
飲酒運転の車に衝突され頭部外傷による昏睡状態に陥ります。
Dave Lizmiは早期の回復と復帰をを期待しつつ'96年に本作をリリースし
Ron Youngを代役に立ててツアーもやったようです。
しかし結局Frank C. Starrはその後一度も目醒めることなく
'99年6月に亡くなりました。
これに伴ってバンドも敢え無く解散したのです。

-なんたる悲劇か。

後年、HaggisはFrank C. Starrとの決別に後悔を滲ませ
Dave Lizmiとともにバンドの映像をアーカイブし、音源を編纂して再発しました。
今般の作文に当たって聴いているのはこの際の再発盤という訳です。
'12年再発の〝Gettin' Pretty Good...”には3曲のデモが追加収録されています。

因みに〝Rockin' Is Ma' Business”のアンサーソングである



は'13年公開の映画「G.I.ジョー バック2リベンジ」に
挿入歌として採用されたのですと。まぁ、なんとも言えんわぃ。



-THE FOUR HORSEMENはその表層だけをなぞれば
ほんの一瞬、まばゆいばかりの輝きを放って
アッという間に消えたバンドということになります。
しかしその裏では生き残りを賭けた様々な試行錯誤があった。
才能豊かなミュージシャン達はその個性とアクの強さ故に
ハレーションを起こし散っていったのです。
なんとも切ない話ですが、遺った音は今も素晴らしく豪快でパワフルです。
いいバンドだよ、いやマジで。
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