ぼーっとしがちな毎日 [故人を悼む]

ある程度の確率で予見可能な未来の出来事については、
それに対して覚悟を決める時間的な余裕があれば
それなりに自分を納得させることができるだろう…
とタカを括っていたものの、実際にその時が近づいてみると
精神衛生に何かしらの変調をきたすものですね。

今年に入ってから色々気に病むことが多くて、ちょっと滅入ってます。
なんか気が付くとCDとか、他にも余計な物をポチポチしちゃって(苦笑)
うん、僕、些か動揺しているんだろうな。

と、なんのことやら思わせ振りで申し訳ありません。



去る16日、Ray Kennedyが亡くなっていたようです。

一般には(古い話ですが)八神純子の「パープルタウン」騒動、
メタル界隈では(これまた古い話で)スーパーロック'84出演のMSGに
助っ人で参加して、物凄いパフォーマンスを披露した人として有名ですね。
もう少しマニアックなスペックとしては(更に古い話になりますが)
BEACH BOYSの“Sail On, Sailor”('73)を書いたうちの一人だったりします。

殊にMSGの一件は非常に評判が悪く、あちこちでボロ糞に叩かれました。
日本におけるその後の評価に大きく影を落としているのは間違いないでしょう。
当時ガキだった僕は西武球場で実際に目撃しているのですが…
とにかく暑くて朦朧としていたので、良く覚えていなかったりします(苦笑)。
しかし、そこ迄悪く言うようなデキだったかなぁ?
とも思うのですよね。
畑違いの一発屋がのこのこメタルに首突っ込んで来やがって!
という、当時の業界の悪意が相当なバイアスを掛けていたんじゃないか?
と、これは捻くれ者の邪推ですが、なんか当たらずとも遠からぬ気がします。

さて、そんなRay Kennedyですが僕よりもう少し年嵩の方々の中には
KGBなんてバンドを思い出す人も居られるかと思います。

KGBはレコ社(MCA)の仕掛けで結成されたバンドで、
割と黒っぽいノリの音を出していました。
ここでCarmine Appiceがドラムを叩く必然性ってナニ?
とか思ってしまって、僕は余り好きじゃなかったです。
もっとも、Ray Kennedyの出自としては
そういうスタイルの方が正解だったのですが。

'76年に2枚のアルバムをリリースしてKGBは消滅、
Ray Kennedyは'80年に「ロンリー・ガイ」を含むソロアルバム
“Ray Kennedy”を発表します。このアルバムはDavid Fosterや
TOTOが絡んでいたということで結構話題になりました。
ブルーアイドソウルからAORへの華麗なる転身ですな。
で、この辺の尻の軽さがメタル一徹の人達に疎まれたのではないかと。

そして時系列を下って次の話題がMSG…とはいかないところが
ここのブログの真骨頂でございます。

KGBより遡って'74年、
この人がDe Palmaの「ファントム・オブ・パラダイス」挿入歌として
“Life at Last”を吹き込んだのは割と知られている事実ですが(?)、
実はもう一本、映画の劇終においてその歌声を響かせているのです。

その映画のタイトルは“Uncommon Valor”('83)、
邦題は「地獄の七人」-ズバリ、傑作です。
逆光の中、野っ原で独り踊るRandall Cobb(元ボクサー、役者)の
シルエットが非常に印象的なエンドクレジットで流れるバラード
“Brothers in the Night”…これがとても良いんだよねぇ。

作曲はRay KennedyとKevin Dukes。
後者はスタジオミュージシャンのようです。
名だたる大御所(Jackson BrowneやらBilly Joel、Don Henleyなど)の
ツアーやレコーディングでギターを弾いているそうで、
この曲でもAOR丸出しなギターソロを披露しています。
作詞は作家のDavid Ritz。
Marvin GayeやRay Charlesなど、黒人音楽家の伝記を多く書いていて
それ等は翻訳もされているのでご存知の方も居るかと思います。

これはねぇ、この曲は映画共々もっと評価されるべきだと
強く主張するものです。

映画については完全にB級扱いながら良い役者がたくさん出ていて
(Gene Hackmanをはじめ、Fred Wardや若き日のPatrick Swayzeなど)、
変格のベトナム戦争モノとしてもかなり優れていると思います。
監督のTed Kotcheffが、「ランボー」の次にこれを撮ったというのも
なかなかに興味深いところです。

一方の“Brothers in the Night”は…
これが残念な事に一度もCD化されていないのです。
映画公開年にシングルレコードは出たらしいのですが
サウンドトラック盤としてのリリース(因みに劇伴はJames Horner)が無く、
結局その後も音盤メディアになっていないと。
なんともはや、大変遣る瀬ないことです。

幸いにも今はYouTubeがありますから
映像込みで簡単に見ることができますが、
可能ならば映画本編を全部見て、その余韻と共に聴いて欲しい1曲です。

MSG以降のRay Kennedyについては、僕は良く知りません。
調べてみても余り出て来ないんだもん。
'88年ソウルオリンピック開会式のテーマ曲
(Laura Braniganが歌った“Take Me Away”)
を書いたというのは大きなトピックですが、
更に下って'90年代中頃以降は殆ど情報が無くなっちゃうのです。

いずれにせよシンガーとして成功したとは言い難い人でしたが、
'80年代前半に大きな話題(あまり良い話じゃなかったけれど)を
提供したことで日本人の記憶に残るミュージシャンです。
勿論僕にとっては“Brothers in the Night”という
名バラードの歌い手として今後も思い出されることでしょう。

-故人の冥福を祈って、合掌。


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