トリックは割と平凡(ちょっと狡い) [たまには映画]

先週後半はSTORM CORROSIONと、(何故か)CAMELを交互に繰り返し聴いていました。

しかし、STORM CORROSIONはとても感想が書きにくいです。
物凄く引っ掛かるものがあって何度も聴いてしまうんですけど、
いざ作文しようとするとどうにも上手く纏まらない。
「地味」とか「陰鬱」ってことで括っちゃうとその後の言葉が出て来ないんです。
なんか違うアプローチをしないといけないんでしょうが、
全然取っ掛かりが見つかりません。
早くもほぼ諦めの境地。

で、CAMELはまぁ、今更ですもんねぇ。
…と、言う訳でここに書くことが無いんです。

仕方がないので映画DVDを1本、無理矢理見ましたよ。



不連続殺人事件 / 1977
不連続殺人事件 [DVD]

不連続殺人事件 [DVD]

  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • メディア: DVD


ズバリ、面白かったです。
1947年、坂口安吾が雑誌「日本小説」に連載した本格探偵小説が題材でありますが、
140分という長尺をだれることなく、原作をほぼ忠実に映像化出来ていると思います。

太宰(うへぇ…凄く嫌い)などと並んで「無頼派」と称された純文学の気鋭でありつつ、
探偵小説や捕物帳なども積極的に書いた坂口安吾ですが、
本作は
「誰にも犯人を当てられない探偵小説」
というスローガンの元に書かれた1作で、
連載の節々に作者から読者へ向けた挑戦文が差し挟まれていました。
ある種の双方向性を意識的に模索したスタイルは
戦後間もない時代の娯楽としてかなり効果的だったんだろうと推測されます。

もっとも、この映画版ではそうしたインタラクティブな要素は全て排され、
ストーリーだけが淡々と描写されます。
原作を貪るように読んだ身からすると非常にスッキリと分かり易い
(場合によってはちょっと物足りない?)のですが、
なにしろ登場人物の多い話なのでいきなりこの映画だけを見ても
ちょっと分かりにくいかも知れません。

監督は去年、長い消息不明から突如姿を現し話題となった曽根中生。
若松孝二の「壁の中の秘事」('65)において脚本デビュー。
その後にっかつロマンポルノを多数く監督した、この人も当時の気鋭ですね。
代表作は「博多っ子純情」('78)になるんですかね?
僕は見たことないけど。

曽根中生は坂口安吾の大ファンで、本作の映像化は彼の長年の夢だったそうです。
種明かしに向けた伏線の明快な絵作りや、一見冗長に見えて実はロジカルな編集など
確かに原作を自家薬篭中のものとしている様子が仕上がりにきっちり反映されています。

そしてやはり、この映画の大きな見所は
豪華なんだか寄せ集めなんだか良く分からない俳優陣でありましょう。
なにしろ29人もの人々が閉鎖空間にあって、8人がバタバタ殺される話なので
脚本と同様、演者の見た目や演技にもメリハリが無いと
誰が誰やら分からなくなっちゃう(笑)。

女優陣をロマンポルノから多く起用する中(皆美人でびっくりしちゃうよなぁ)
桜井浩子(科特隊のアキコ隊員)がぽつねんと混じっていたり、
当時既に完全なお婆さん役を演っている初井言榮(当時48歳)とか。
男優についても瑳川哲朗や田村高廣といったサラブレッドと並んで
内海賢二(則巻千兵衛の声を充てた人…と言えば分かりやすいですかね)や
浜村純が出演していますが、やはりなんと言ってもこの映画の白眉は
内田裕也にトドメを刺すと言えましょう。

シリアスなドラマを演じるのは恐らく本作が初めてだった筈ですが、
(演技はともかく)その立ち居振る舞いがかなりカッコ良くて絵になるんですね。
昭和22年の日本にカーリーヘアの長髪はあり得ないだろう…
というヤボな突っ込みも出来ますが、
劇中人物のキャラクターとしてはおおいにアリ線だと思いました。

-更に。
ここのブログとしては、本作の音楽を担当したのが
COSMOS FACTORYだというのもひとネタですね。
'77年の映画公開時はバンドの晩期に当たります。
僕は同年にリリースされた「嵐の乱反射」を聴いたことがないので下手なことは言えませんが、
本作での劇伴を聴く限り3rdアルバム“Black Hole”('76)の路線から大きく外れた感じは無く、
KING CRIMSONを意識したような、やたらと重たいリズムの曲が流れてきます。
正直、絵面との親和性という部分ではちょっとミスマッチなところもありますが。



僕は基本的に大島渚や篠田正浩が苦手なので
今般ATGのフィルムライブラリーがDVD化されると聞いてもあまり嬉しくなかったのですが、
本作だけは色々な意味でどうしても見ておきたかったのです。
期待に違わぬ娯楽作で、非常に満足度の高い1本でした。
もしご覧になる方がいるようであれば、
面倒でも安吾の原作をザッと読んでから見ることをお薦めしておきます。
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