今回はやや淡泊 [シリーズ作文]

なんか意外にもそこそこ書けてる感アリ。
とか言って油断すると途端に息切れしそうですが。
では4回目、いってみましょうか。



FISHのソロ その4

Fish自身のレコード会社、
Dick Bros. Record Co.の初リリースは1994年。
Fishと幾つかの別バンドが参加するオムニバス盤でした。
〝Time and a Word”と〝The Seeker”の両カバー
(その3参照)はここで初披露されています。
以降オフィシャルブートライブや先行シングルを出した後、
同'94年に新しいスタジオアルバムが発表されました。

Suits / 1994
f4suits.jpg

演奏メンバーは前作からほぼ変動なく、
プロデューサーのJames Cassidyも続投となりました。
このJames Cassidyは本作において
キーボード演奏の役割をFoss Pattersonと分け合い、
また作曲面での貢献も大きなものでした。
その後はクレジットされなくなりますが、
これは本作の音楽的方向性が次作以降に
継承されなかったからでしょう。

果たしてこのアルバム、
音楽面で一番の問題作ではないかと思われます。
具体的にはゆったりスローからミドルテンポまで、
殆どの曲でリズムが跳ねているのです。
ロックの範疇をはみ出る程のものだとは言いませんが
全般にソウルのノリを意識しているのは間違いない。
スコティッシュルーツの香りもすっかり沈んでしまい、
当時これを聴いた僕は物凄く面食らったのだ。
ソロ活動をスタートさせて約5年で
MARILLIONから最も遠い位置に辿り着いた訳ですが、
これが早かったのか遅かったのかは判断の難しいところ。
ただ、以降ここからの揺り戻しが起きることを考えると
本作のアウトプットがFishにとって
欠くべからざる通過点だったのは間違いないでしょう。



もっと「こっち側」に寄った馴染みやすい曲もあるのですが
あえて遠いところの曲を貼ってみました。
今聴く分にはこれも全然、普通にカッコイイよな。

ところで本作、商業的にはどうだったのでしょうか?
なかなか面白いことにPolydor期の2枚よりも
チャート上位(英18位)に食い込んでいます。
シングルカットはいまいちだったようですが。

アルバムのバリエーションは前作同様大きく3種類。
'94年のオリジナル(全10曲)はカタログ品番に
細かな違いがそこそこの数あるようですが
基本は全てヨーロッパでのリリース。
ROADRUNNERの配給網を得ての共同リリースである
'98年版はリマスター、ボーナストラック2曲を追加。
そのうちの1曲〝Out of My Life”は
この作文の最初に出て来たオムニバス盤の収録曲で
スコティッシュトラッドの味わいを存分に内包しています。
お陰でアルバム全体の印象が大きく変わっていますが
Fishが当時目指したベクトルの焦点がボケてしまうのも事実。
ですからこれは飽くまでオマケとして聴くのが正解かと。

そしてその'98年盤を遡ること1年、
'97年にポニーキャニオンから国内盤が出ています。
ボーナストラック2曲はROADRUNNER盤と同じですが
果たしてリマスターされていたのかどうかは定かでありません。
当時の僕にしてみればオリジナルから3年遅れの
寝ぼけたリリースでしかなかったので全くチェックしなかったのよ。

最後にChocolate Frogからの'17年DX版はCD3枚組。
新規リマスターの本編は'98年版と同様の12曲入り
(細かいことを言えばボーナス曲の収録順が違います)。
2枚目は14曲収録のデモ集。
そのクレジットによると'92年には既に幾つかの曲の原型が
存在していたことになります。
そして3枚目は本編収録曲を集めたライブ。
'94、'95年と'06年に各地で演奏されたものです。



EMIとの訴訟沙汰は長引いていたようですが
自らのレーベル経営はまずまず順調に滑り出し、
また創作面においても本作である種の極北へと到達しました。
Fishがこれをひとつの句切りと捉えたであろうことは想像に難くなく
それを証明するような連作を翌'95年にリリースします。
これは只のベスト盤と侮ることのできない、
なかなか重要なタイトルであると僕は考えます。

次回に続く。
コメント(0) 
共通テーマ:音楽

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。