読みにくかったらすみませぬ [シリーズ作文]

このシリーズ作文のヤマ場でございます。
しかし案の定書くのに飽きてきちゃったので、
なーんでこんなこと始めちゃったんだろうなぁ
などと小さな声で呟いてみたりして。



FISHのソロ その7

※関連エントリー '11年6月6日
 「梅雨の季節に聴く1枚」

ROADRUNNERによるカタログ再発に当たっては
プロモーションのためのベストアルバムが
'98年にリリースされています。
〝Kettle of Fish 88-98”と題された
13曲入りのアルバムには2曲のシングルエディットと
2曲の未発表曲が含まれていますが、
〝Lady Let It Lie”のシングル版を除いては
後にChocolate Frogから再々発されたDX盤の
各タイトルボーナスディスクに収録されているため、
よっぽどのマニア以外は特段気にしなくて良い1枚です。
いやどうしても!ということであれば
同じタイトルの映像集(PV11曲、'02年DVD化)なら
良いんじゃないかと思います。

こうした旧譜再発の絨毯爆撃に続けて
翌'99年に新譜が発表されました。
Fishとしては再度自らの手で
ビジネスをコントロールしたかったかも知れませんが
如何せん無い袖は振れないということで
この新譜もROADRUNNERからのリリースでありました。
…だけどねぇ。
商売を気にせず創作面だけに集中すれば良いってのは
ある意味幸せなことであり、本作の音楽的充実は
こうしたバックグラウンドを抜きにしては
成立しなかったんじゃないかとも思うのですよ僕は。

Raingods with Zippos / 1999
f7rgwzps.jpg

既に書きましたが、MARILLIONを起点として
そこから出来るだけ遠い場所を目指したFishは
アルバム〝Suits”で復帰不能点へと至ります。
そしてそこから踵を返して選んだ帰路は
より普遍的な王道でありました。

本作はその王道を歩む中で到達した頂点であると、
まぁ僕としては断言しちゃいたい訳なのですけれども
(なんで自信なさ気なのかというと
先日出たばかりの最終作〝Weltschmerz”('20)は
もしかして本作を超えちゃってるんじゃないかと、
そんな気がするからなのです)。

演奏者での注目は
暫く振りにアルバム中の2曲をFishと共作し、
その存在感を改めて印象付けたMickey Simmonds
(この人のピアノは否応なく聴き手の耳を惹きますな)、
それ以外のキーボードを担当した
Tony Turrellという新顔も相当良いです。
そしてFrank Usherの不在をカバーするべく客演した
Steven Wilson(本作では演奏のみ)や
Bruce Watson(BIG COUNTRYの人)を下支えした
Robin Boultですね。

作曲についてはMickey Simmonds以外にも
多数の名前がクレジットされていますが
(意外なところでRick Astleyとかね)、
基本的にはFishがメインで
他は全てサポートだったのだろうと推測します。

そんな我の強いアルバムの最後を飾るのは
大がかりな組曲形式の〝Plague of Ghosts”。
プログレ的大仰さ、跳ねるリズム、
トラディショナルなメロディの独唱…
それまでのキャリアを通じて体現した音楽的要素を
全て投入して構築された大曲は
紛うかたなきブリティッシュロックそのものでありました。

その歌詞は文学的かつ抽象的、
おまけにスコットランドの口語表現を多く含むので
解釈がとても難しいです。
非常に断片的ですが、逃避/探求/夢想/困難を経て覚醒し
自己実現の確証を得るってことなんじゃないかなぁ、多分。
受容と忘却をもって今日という永遠を見つめ、
我々はそれを成し遂げる
という最後の一節は実に大人の決意表明って感じよねぇ。

アルバムタイトルの「ジッポを持つ雨の神々」とは
恐らくFishがそれまで対峙して来た敵のことで、
結局そうした人々も
決して勝ちを収めることが出来ないという事実を
「幽霊の疫病」(意味なきものの象徴でしょうか)
という曲で歌ったのです。

-と、しかしこの曲は長尺なので
同じキーワードで歌われるアルバム冒頭の↓を
貼っておきましょうかね。



本作リリースから約10年を経た後、
無惨に解体されてしまうEMIを目の当たりにして
Fishは一体何を思ったんでしょうね。
♪Tumbledown,tumbledown,tumble,tumble,tumbledown
って歌ったのかな、やっぱり。

長々と書きましたが、これを要するに「結実」です。
作り手の意図を深く掘り下げてみたくなるアルバム。
20世紀の最後を飾るブリティッシュロックの金字塔。
んー、我ながらちょっと絶賛が過ぎるかも知れませんw

最後は毎度フィジカルバリエーションについて。
本作にも他タイトルと同様Chocolate Frogによる
再発DX盤('15)が存在します。
Disc2にはプリプロダクションデモやライブで再構成された
〝Plague of Ghosts”の別バージョンを収録。
そして3枚目ではデモとライブ、及び本作文冒頭に書いた
〝Kettle of Fish 88-98”の未発表曲×2を聴くことが出来ます。



充分な音楽的満足を得てFishが次に目指したのは
自らのレーベル再建でした。
〝Plague of Ghosts”に歌われたワード、
〝Chocolate Frog”をその名に冠した会社は
Dick Bros.と同じくオフィシャルブートライブのリリースをもって
迅速に立ち上げられました。

音楽ソフトを巡るビジネス手法が急速に変化する中、
試行錯誤と失敗を経験しつつも
早い段階から手売りの可能性を追求したFishの努力は
徐々に良い方向へと向かい始めたようです。

次回に続く。
はー、毎度のことながら思い入れが先行すると
途端に僕の作文は読みにくくなるよな。
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