まさにエピック [シリーズ作文]

そろそろ(漸く)シリーズの終わりが見えてきました。
次回ラストの1枚を書いて、
更に番外と総括もやりたいかなぁ。
そうするってぇと都合13回の長編になりますが
我ながらよくもまぁ、書きも書いたりって感じです。



FISHのソロ その11

2012年10月に開催されたFish Conventionでは
2日間に渡って通常セットとアコースティックセットが
それぞれ披露され、その通常セットで新曲が演奏されました。
〝A Feast of Consequences”(成り行きの宴)と
題されたその曲は果てなき消耗戦が引き起こす
不安と焦燥を歌ったものだと思われ…
はい、なんとこれ戦争の歌なんですね。
いやしかしそれにしても、
Fishが叙事詩を書くとは非常に意外でした。

-休日にたまたまソンム(フランス)を訪れたFishは
そこが母方祖父の出征地だったことを知り、
また父方の祖父も同じ時期アラス(こちらも仏)に
駐留していたという事実に触発されたのだそうです。
第一次世界大戦は地上戦闘における新たな戦術である
塹壕戦によって戦線の膠着が多発したため
それまでの戦争に較べて死者数を激増させました。
Fishの母方祖父はソンム(大戦最大の激戦地)で
塹壕を掘っていたのだそうで、
んーそりゃ色々思うことが出てくるやも知れません。

A Feast of Consequences / 2013
fishfastcnsq.jpg

遠鳴りのパイプ、不穏な響きのキーボード、
そして枯れたアコギサウンドに導かれての歌い出し
(〝Perfume River”)は
本作がコンセプチュアルなアルバムであることを示すのに
充分な雰囲気を醸しています。
暫くぶりの参加となった
Robin Boultのギターサウンドは全般にドライで
重苦しいアルバムにカラっと明るい差し色を加え、
Foss Patersonは各種サンプリングからピアノまで
幅広い音色を使い分けて各曲のスケール感を押し広げます。

-結果、なかなかのプログレ感。
アルバム全11曲中の中盤5曲を使って描写される
「ハイウッドの戦い」はその構成、展開の妙で
僕を大変驚かせました。
中でも〝Crucifix Corner”は単曲として聴いても
物凄く素晴らしい出来。



…なんてぇこった、と思わず口を衝いた僕。
だって今更こんなのが聴けるとは思わないじゃない。
暫くの間このアルバムを少しく遠ざけて
あまり回数を聴かなかったのは
生来捻くれ者の為した無意味な行動ですが、
それにしても徹頭徹尾客観視点が
メインのアルバムは実に異例で
Fishのパーソナルな心情がほぼ見当たらないから
聴いていると段々不安になってきちゃうのです。
旧作で採り上げられたFelliniもGoghも
結局は修辞のためのツールでしかなかったのに、
このアルバムは最後まで本気の
ノンフィクションなんだもん。

結果プログレ界隈で
本作は好評をもって迎えられ(我が国除く)、
各所で年間ベスト10アルバムに選出されています。
客層の平均年齢が高く(これは海外も一緒なのだけど)、
手売りやデジタル配信に疎い日本の聴き手は
ほぼ完全に置いて行かれた印象です。
まぁ僕とてそんなに偉そうに
言えたものではありませんがね。
なにしろ本作のリリースを8カ月ほど
気付かずにいましたから(苦笑)。

制作過程を追ったドキュメント映像と
プリプロダクションのライブを収めたDVD付きDX版、
そしてCDのみの通常盤が'13年のリリース。
翌年数を限ってアナログレコードも出ていたみたい。



本作リリース後のツアーは
〝Misplaced Childhood”のリリース30周年ツアーへと
間断なく引き継がれ'16年の春まで続きました。
〝Farewell to Childhood”と題され
同作の演奏を最後とする旨が宣言された時点で
引退の意向はかなり強まっていたんじゃないかと、
まぁ今だから言える話ではありますが。

次回に続く。
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