シリーズ 盤無き好作 その2 [シリーズ作文]

ロシアがウクライナに攻め入ってもうすぐ2年。
未だ終結の気配すら感じられない中この国ではあまり報道もされなくなり、
実際のところどうなってんだ?
という疑問と不安はありつつも
やはり我がこととして捉え続ける難しさはあるよなぁ、と。

普段こういう話からは意図的に距離を置く僕が
なんでこんな話を書き始めたのかと言えば

Polemosophy / LA HORSA BIANCA / 2024
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ウクライナのバンドで、'18年頃から活動しているようです。
本作は「戦時下における(一時的な)空想による逃避」のための
組曲とのことで、僕はコレをどういう気持ちで聴いたらいいのか
分からなくてちょっと困ったのです。
まぁでも、結局単純に音楽として面白がれるかどうかしかないんだよね。



まどろむようなサイケデリアは
徐々に凶悪な歪みサウンドに取って代わられ、
その狂騒も突如元の静けさに飲み込まれてしまう。
うーん、これ、やっぱり気軽に聴けるもんじゃないなぁ…
と、冒頭から僕の脳味噌は色々考えちゃうのだけれど
音楽そのものへの没入度は高く、なかなかの混乱状態に陥ります。
しかしこのふわふわとした落ち着かなさ、
腰の据わらない気持ちの悪さこそが本作の肝であり
バンドの創作意図に沿ったアウトプットなのだな。

他の幾つかの曲ではバンドのかつての姿
(スラヴの薫り漂う快活なプログレサウンド)を垣間見せつつも
やはりどこか閉塞した感覚があって
過去作とは一線を隔しているように思うのです。
しかしなにしろ聴くのを止められないのは
この緊張と弛緩の繰り返し(のサイクル)に
底知れない魅力を感じているからなのでしょうねぇ。



安易に安寧へ向かうことなく徹底的にもがきながら
それでもどこか出口に向かおうとする姿勢を
アルバムの最後に示したのは非常に現実的で、
バンドが本作を「空想による逃避」としつつも
「厳然たるリアル」から逃げない(逃げられない)様子が伺えます。
これはまさに時代と並走する音楽であり、
そこから聴き手が何を思考するのかが試されているような気がします。

僕は…この人達には過去作のような曲をまたやって欲しいと、
そんなことを思ったりした訳ですが本作を入り口としたことについて
なんら後悔はなく、およそ優れたミュージシャンってのは
いかなる状況下にあっても優れた音楽をやるものですね。

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