突然、急に出てきた感 [新譜]

夏休み集中エントリー2019の途中ですが
とても面白いヤツが出ていたため緊急で差し込みます。


先日、新宿GARDEN SHEDの新入荷欄に
Francois Breantの“Voyeur Extra-Lucide”
('79-'10年12月20日エントリー参照)が脈絡なく現れて
ちょっとギョっとしたのです(すぐに売り切れたようです)。
どうやらMUSEAが数を限って再プレスしたみたいで、
うん、それなら僕持ってるし…ってなもんだったのですが
なんだか少し気になったので調べてみると



ほほほう!これはこれは。
物理盤もそのうち入って来るのでしょうが
ちょっと待ちきれないのでiTunesで即DLしました。

La Nuit des Lapins Geants / FRANCOIS BREANT / 2019
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なんとなんと、実に40年振りの
リーダーアルバムということになります。
'03年、MUSEAから旧譜2枚がCD化された際に
収録されたボーナストラック(当時の新曲)が
失礼ながらあまり面白くなかったので
過度な期待はせずにやや斜に構えて。

全般に言えるのは、相変わらずこの人の音楽は
情景を想起させる力に優れているということです。
最初のアルバム“Sons Optiques”('78)に
「視覚的音響」という邦題
(これは稀に見る素晴らしい訳だと思います)が
付いたことで我が国におけるFrancois Breantの
音楽の聴かれ方がやや限定的なベクトルに
収まってしまった感もありつつ、
それでもやはりこの「映像的」な音楽は
とても個性的かつ魅力的です。

アルバム冒頭のタイトル曲が
“Voyeur Extra-Lucide”の終曲
“We Ate Zoo”を高速化したような感じで
ちょっとおフランスのエスプリが
効き過ぎなんじゃないかと眉間に皺が寄りましたが…
もしかして「我々は動物園を食べた」を受けての
「巨大ウサギの夜」なのだとしたら
これはちょっとした復讐ホラー劇だよな、なんて思ったり。

-と、ここで僕ははたと気づいたのです。
このアルバム、
“Voyeur Extra-Lucide”(のレコードB面)からの
地続き感がとても強く感じられるのです。
そこここにさりげなく紛れ込んだ旧曲のフレーズは
恐らく意図的なものだと思われ、
これはなかなか凝った作りで面白いんじゃないかと
俄然聴き込みの集中度が上がりました。

客演の管楽器が前に出る場面や
Francois Breant自身が奏でるアコーディオン
(これは上記の旧譜ボーナストラックでも聴かれました)
は新しい要素で、しかしジャズ方面に向く様子は
そんなにありませんね。
基本どこまで行っても劇伴っぽいというか、うーん…
BGMとして聴き流すほど軽い音楽って訳でもないんだけど。

そしてもう一つ、Didier Lockwoodの不在を
大変寂しく感じましたねぇ。
このアルバムのバイオリンは
是非Didier Lockwoodに弾いて欲しかったなぁ、と、
これは聴き手の勝手な無い物ねだりですが。

-結論。
本作リリースに当たって“Voyeur Extra-Lucide”を
再プレスしたのはなかなか的確で意義深く、
それを踏まえることで本作の魅力は更に増すと思います。
じゃあ新譜を単体で聴いたら詰まらんのか?と問われれば
決してそんなことはないのですが、
これを聴いて気に入ったとしたら
結局遡りたくなるだろうとは容易に想像が付きます。

うん、これ相当良いんじゃないでしょうか。
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