プログレ続き(少しだけメタル) [新譜]

前回書くかどうか分からんとか言いましたが、
うん、これはやっぱりちょっと書いておきたいかな。

Kintsugi / JOHN HOLDEN / 2022
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英国マルチミュージシャンの新譜。僕は去年出た3枚目で初めて聴きました。
割と良い印象ではあった筈なのですが、何か他のヤツに持っていかれた
(多分BEND THE FUTUREとかそっち方面を傾聴していた)のでしょう。

軸足はシンフォニックロックに刺しつつ
ちょっとお洒落なAORの歌モノ(ボーカルは客演による)を挟む構成は前作と変わらず。
客演陣も引き続きって感じで、
あ、Robin Armstrongは自分のアルバム(前々回作文のCOSMOGRAF)を
作るので忙しかったのか今回は不参加です。
フルオケサイズでドカン!と派手に行く感じではなく
チェンバーミュージック+α的な朴訥さが特徴的で、
このスケール感にSally Minnearの声がドンピシャリとハマるのです。



アルバムのダイジェストじゃなくてSally Minnearの歌う曲をフルで1曲貼りたかった…。

タイトルの“Kintsugi”はそのまんま「金継ぎ」だそうで
ホント、外人てそういうの好きだよねぇ。
ジャケットのアートワークを見れば分かる通りの拡大解釈で
日本の「勿体ない」という考えから産まれた芸術(の宇宙観)とは
やや趣を異にするというか、いや、言いたいことはわからんではないのだけれども
些かしっくり来ない感じがします。

などというおっさんのイヤミはさておき
今回これを書こうと思ったのは前作よりも俄然印象深かったからで、
しかし改めて前作と聴き較べてみるとそんなに大差無いというか
根っ子の部分はほぼ同じなのね。
じゃなんだ?と問われれば恐らくアルバムの構成(曲順やら各曲のスタイル、尺)が
奇麗に「収まっている」感じがするのです。
聴いていて途中気が散ることなくアルバムを完走出来る。
前作では早い段階(2曲目)にAORが出てきちゃうので
あれ?なんだこれ!?ってなっちゃうのね。
…まぁなんつうか、細っけぇ話で申し訳ありません。

-と、COSMOGRAF、COMEDY OF ERRORS、John Holdenと英国モノを3連発で書きましたが
どれもこれも全部良かったです。イギリス勢に元気があるとなんとなく嬉しいよね。



ところで今月末は



3年振りにIan Wilsonの剛直なメタルが爆発します。
なんだかんだこのバンドも20年近くやっている訳で
いい加減もっとがっつり注目されて欲しいところです。



地元の橋の下で爆音を轟かせている場合ではない気もしつつ、
これはこれで滅茶苦茶カッコイイ生き方な気もするな。
しヵし路上メタルってのは、我が国でやったら大変なことになるだろうなw

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夜はちょっと掛け布団が恋しい [新譜]

暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので。
これからの季節は(ここ数年の僕の経験上)大概プログレ方面の良作が
ポンポン出てくる筈なのでとても楽しみです。
しかも今年は英国勢がとてもイイんじゃないかって気がするのだ。
前回書いたCOSMOGRAFもそうだし
(多分作文はしないけれど)RED BAZARの新しいヤツも良かったしね。

そんな中僕が最も注目(耳)していたのが

Time Machine / COMEDY OF ERRORS / 2022
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復帰作である2枚目から前作(5th)までは2年毎のリリースでしたが
今作に至るまでは5年の期間を要しました。何か事情があったのでしょうか。
何故か'20年に3rdアルバム録音時のアウトテイク“Time There Was”が
ポロっと配信されたけれどそれっきりだったしね。
まぁナニはともあれ無事に新譜が出て良かった。

4作目“Spirit”('15)で完成したギター×2とキーボード、
そして専任ボーカルが上物を担う6人編成は
由緒正しき英国ポンプロックを21世紀の今に継承します。
当然僕としては毎作聴き逃せない最重要バンドなのですよ。



前作('17年6月19日作文)で導入された
よりクラシカルなプログレ要素はアルバム全編に拡大され、
本編(5曲45分)は10分超えの長尺2曲を軸に展開します。
キーボードの音色選びは勿論、トータルのプロダクション
(2ndから本作まで、全てRob Aubreyがミックスとマスタリングを担当)が
非常にこなれているので耳に届くサウンドの安心感たるや、
これぞシンフォニックロックと膝を打つ出来栄え。

“Time Machine”というタイトルは本作のコンセプトを明快に示していて、
このバンドの良いところの一つは変に小難しいレトリックを弄さないところだよな。
いや、中二病的なアレも勿論大好きな僕ではありますが。

2曲目“Lost Demigods”のイントロはベートーベンの第5番から
PINK DLOYDの「狂ったダイアモンド」へ繋げるという小技から始まり
曲中にも第9番をまぶすという引用を駆使しています。
ちょっと面白い試みで、勿論僕は嫌いじゃないです。
ただアルバムタイトルからしたらここは「狂ったダイアモンド」じゃなくて
「ようこそマシーンへ」じゃないの?と、余計な突っ込みを入れたくはなりますがw

本編最後を飾る長尺5曲目“Time Machine”では
バンドが得意とする素朴なメロディがだだ洩れ、
中間部では6/8拍子のクラシカルなインストパートが疾走します。
そして後半オクターブを下げ朴訥に語るようなボーカル(フランス語?)には
枯れたイタリアンカンタウトーレ(フランス語なのに?)のような味わいもあって、
これもバンドが試みたちょっとした新機軸だと思います。

前作からの流れである種集大成的なアルバムとなった本作は大変充実した1枚となりました。
ただ、正直次が難しくなった気もするんだよね。まぁ余計なお世話なんだけどね。

あ、オマケのライブ(6曲目)はまぁ、うん、飽くまでボーナストラックということで。
えーと、英国モノで言うと次はJohn Holdenですかね。書くかどうか分からんけど。



それから素朴と言えばメタル方面でも



デビュー時は素人っぽい田舎臭さが芬々と漂うバンドでしたが
3枚目以降歌い手が固定し、プロフェッショナルなサウンドをばんばん繰り出す
良いバンドになりました。
振り返ってみたら'12年3月15日に2ndアルバムのことを少しだけ書いていましたな。
今作は'20年に出た5枚目に続く5曲入りEPですが、まぁこれは間違いないわ。
これぞブリティッシュメタルの醍醐味、ってところでしょうか。

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単発、短め [新譜]

Heroic Materials / COSMOGRAF / 2022
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ここ数作に関して言えばアルバム毎に割と表情の違うアウトプットが続いていて
やや腰の据わりが良くない印象ではありましたが、
本作に聴かれるソングオリエンテッドな姿勢は僕の耳を惹き付けるに充分でありました。

今年のGW前に発表された ↓



があまりにPINK FLOYD(というかRoger Waters)丸出しで
プログレ(殊に英国の)がこの手をやろうとするとみんなこうなっちゃうのかなぁ、
なんて独り苦笑していたのです。
因みにこの曲はBIG BIG TRAINのボーカリストDavid Longdonの死去に際して書かれた曲で
今のところ配信のみ、フィジカルはありません。

で、これに続いての新譜ということで
え~、今回はそっち路線なのぉ?
と、些かうへぇ顔になっていたのですが…
まぁ予想としては概ね当たっていましたがそこまでPINK FLOYDそのまんまって感じでもなく、
これを端的に指摘すると本作の楽曲にはそこまで強くブルースが薫らないのです。
勿論それっぽい場面も散見(聴)されますが全般に泥臭いいなたさは薄く、
ただRobin Armstrongの歌唱がそこそこRoger Watersを意識している感じですかね。



おっ、ジャグァーEタイプ!なんて、音楽とは別のところで声が出たりして。
僕が愛車(勿論ジャガーじゃありません)を手放して丁度15年、
もう自分で運転しようとは全く思わなくなっちゃったけれど
車のゲームとかは未だ妙に熱中しちゃうもんね。
しかしアストンマーチンでもベントレーでもなくジャガーというチョイスは
やっぱりPINK FLOYDを彷彿させるよな。

…話がズレた。
William "Billy" Mayなる架空の人物が
99年の人生を振り返るという建て付けのコンセプト作だそうで、
ジャケットからもわかる通り2次大戦では英国の防空パイロットだったという設定です。
上掲については内燃機関の自動車に対するトリビュートということらしく
どうやら大きく変わりゆく世界について老いた視線がどう捉えるのか、
ひいては人の生き方がどう移ろうのかがテーマってことみたい。
まぁ、うん、って感じで僕個人はこの点特に何か想うところはありませんが
やっぱりなんか、イギリス人っぽい皮肉が込められているのでしょうねぇ。

冒頭に記した通り音楽的変遷のあったCOSMOGRAF(=Robin Armstrong)ですが、
本作で示したベクトルが一番しっくり来ていると思うのは僕だけではない筈です。
なにしろ、何枚か一緒に仕入れたうちこれだけは続けて3回リピートしたもの。

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こりゃイイ [新譜]

あぁ、これはどうやら僕にとって今年前半の大本命な気がします。
先日(19日)書いたNOTTURNO CONCERTANTEも凄く良かったけれど
あれは'20年のアルバムってことで。

Everbloom / SECRET GARDENS / 2022
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バンドに関する情報が少なくてちょっと困っていますが恐らくJoseph Arrington(ドラム)、
Reese Ortenberg(ベース)、そしてGreg Almeida(ギター)によるトリオ編成だと思われます。
活動拠点はNYということで間違いなし。
SECRET GARDENSとしての最初のリリースが'19年っぽいので
バンドとしてはまだ結構フレッシュな感じでしょうか。

で、肝腎のアウトプットですが…



-冒頭曲。
これだけ聴くとなんだよシンセウェーブかよって思われちゃいそうですが、
やっぱりなんだか一部様子がおかしいんですね。
人力の汗臭さとでも申しましょうか、そういう熱量の高さが感じられる。
そしてアルバムを聴き進めるにつれ楽曲と演奏はどんどん複雑怪奇になり
その狂暴性を増していきます。



ポストロック的な音響がメインではありますが地下メタルっぽいローファイ感もあって
サウンドメイクは結構ボーダーレスだと思います。
曲自体はハードなフュージョンというか、まぁこれプログレだよね。
基本はインストゥルメンタルですが
Andrew Wells(EIDOLAというバンドの人だそうです)を客演に迎えたボーカル曲が1曲あって
アルバムの流れに明確なフックを加えています。

むむむ、面白ぇ、これ凄ぇ面白ぇじゃん。
どこか特定のジャンルに規定されまいと必死にもがくミュージシャンの音楽は
聴いていてとても楽しいものです。

本作のテーマはズバリ「春」だそうで四季について全部やるみたいです。
'21年リリースの“Tundra”が「冬」なのかも知れませんが表記がないのでいまいちハッキリしません。
この、全般にやや不親切な感じも僕としては好ましく、正体不明な感じがね。

ここのところなんだかインストものに偏りがちな気もして、特に意図している訳じゃないのですが。



突然話は変わって、7月にコレ ↓が出ますね。



'16年、'17年と立て続けにアルバムを出したかと思えばその後5年間沈黙とかちょっと極端だよね。
そして残念なことにSharlee D'Angeloがバンドのラインナップから外れているようで、
後任はVictor Brandtという人だそうです。どうも若手っぽいですね。
調べるとENTOMBEDやDIMMU BORGIRなんて大御所の名前が出てくるので
(どっちも随分聴いてないなぁ)実力派ではあるのでしょう。
まぁまぁまぁ、なんにしても期待して待ちます。

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出不精ここに極まれり [新譜]

ここ数年はなんにもしないままGWが終わる訳ですが今年は行動制限が無くなったとかなんとか。
ま、だからどこかへ行く、ってのもなくただだらだら過ごしていたのですが。
なにしろ人混みが嫌いなのはコロナ云々の前からずーっとだもんで。
妻の帰省みやげ(お菓子いろいろ)を食べながら連休の最後を過ごしましたとさ。



Anarchic Curves / ESP Project / 2022
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え~、Peter Coyleが歌うのに名義はESP Projectなの?
'21年7月22日の作文(22 LAYERSの項)が嘘になっちゃったじゃないか(恥)。
それぞれどう棲み分けているのか、もはや僕にはさっぱり分かりませんです。

本作についてはインストゥルメンタル主体に展開する曲が(毎度ながら)
僕の耳をググッと惹き付けます。



そしてPeter Coyleの歌声はいよいよEric Woolfsonみたいで、
それはそれで全然嫌いじゃないです。
ただ、やっぱり22LAYERSとの差別化がどうしても気になるところではあります。
あちらは何故か各専門店に無視された形でわが国では話題に上がることが殆どなく、
気にしている聴き手が少ないのは致し方ないとは思いますが。



Stati Equivoci Dell'Essere / IL SOGNO DI RUBIK / 2022
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あれ?これ凄く良くないか!?
前作(1st.)は全然記憶に残ってなくて慌てて聴き直してみました。
確かに本作の礎となるような音楽ではありましたが余りにとっ散らかり過ぎていて
最後まで集中して聴くのがやや辛い1枚でした。
管弦がサンプリング丸出しなサウンドだったのも結構気になりましたね。
で、本作ですがこれは大化けと言って良いのではないかと思います。
基本的にはイタリアらしいヘヴィプログレを体現しつつ現代的な音響にアプローチしたことで
耳触りがなかなか新鮮で、管弦の一部を本物に置き換えたことで
B級な安っぽさもほぼ完全に払拭されました。



パッと聴いた感じとにかくやたらと喧しいCosimo D'Eliaのボーカルが耳につきます。
ただ、前作が英語詞だったのに比して今作は全編伊語なので
当たり前ながらよりイタリアンロックな味わい。勿論こっちの方が断然イイ。
作曲者でありマルチインストゥルメンタル奏者のFrancesco Festinanteと
2人でやっているというのが実体のようですが本作には各所に客演を迎えており
(映像にもあるRichard Sinclair等)、これが凄く効いています。
ズバリ圧倒的な本物感。
イタものの新しいやつで僕がここまで入れ込むのはちょっと久し振りな気がします。



そして昨年に引き続きニュージャージーの怪人が新しいアルバムを出しました。



(笑)。
正規の頒布開始日は5月13日ということです。
今回も限定のレコードとデジタルデータのみということで、
やっぱり日本じゃ全く話題にならないのでしょうねぇ。
いやー、これがここ以外でちゃんと紹介されないのは勿体なさ過ぎる。
深めの位相エフェクトをかましつつブリブリと裏メロを主導するリッケンバッカー、
めくるめくアナログシンセサウンドの洪水
(本作では遂にメロトロンーデジタル式だけど、も登場して大活躍)、
見た目とは裏腹(失礼)に細やかなボーカルワーク…
僕は割と本気でこの人の音楽的才能の豊かさに参っています。

Mind Games / BOBBY SHOCK / 2022
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因みに前作については'21年7月12日に書いています。



とにかく休み中は数を聴いたのでそれぞれについて深く突っ込んだ感想は難しいのですが、
まぁ気の向くままぼちぼち書いていきます。

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両者聴き易くはないけれど [新譜]

ここのところ聴く前の印象と実際の出音に大きな差異のあるヤツが立て続けで、
なんかそういうタイミングだったのですかねぇ。
いや、期待外れとかそういうことではなくて
結果どちらも面白いアルバムではあったのですが。
また両者ともYouTubeに貼れるものがなく(bandcampから持ってくるのが面倒なので)
だいぶ分かりにくいかも知れませんが。



New Eyes for Laika / Nerissa Schwarz / 2022
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ドイツのハープ奏者、作曲家。こちら2枚目のソロアルバムです。
FREQUENCY DRIFT(活動休止中らしいですが)のメンバーと言った方がピンと来るかも。
キーボード、エレクトリックハープによるインストゥルメンタル作で
一部鍵盤をバンドの同僚、Andreas Hackが客演しています。
リズムレスだし、ゆったりのんびりスタイルかなぁ、なんて高を括っていたら
全編ガチガチに硬派でシリアスなアウトプットだったので面喰らってしまいました。
自己認識型AIがテーマだそうで、んー、SFですかね。
エレクトリックハープに各種エフェクトを相当がっつり効かせているようで
パッと聴きシンセサイザーっぽい音が実はハープだったりして、
これプロダクションは相当凝っていますね。

ドイツのお家芸、エレクトリックエクスペリメンタルの系譜をきちんと引き継ぎつつ
コンテンポラリーな響きや微かなポップフレーバーも感じられて、
うっかりハマると何度も繰り返し聴く羽目になります。
僕これなんとなく聴いてみたのですがかなり面白かったです。



The Noon Hour / NATIONAL DIET / 2022
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米国ポートランドの2人組。これが初めてのアルバムです。
最初にこのバンド(?)の名前を見た時
20世紀イギリスは「国民の健康」だったけれど
現代アメリカは「国民の食生活」なのか、なんて思ったのですが
ふと、いや、待てよ、と。
Dietってなんか他に意味があった気がするな…と思って調べてみたら
「議会」という意味もあるそうで、National Dietで「国会」なのね。
まぁ、アメリカはDietじゃなくてCongressの国なので
いずれにしても捻った名前ではありますが。
なんかダブルミーニング的なアレもありそうですな。

で、そんなんですから聴く前には僕の頭の中にカンタベリーなお花畑が
ぐるぐると渦巻いていたのですが…
んー、まぁ物凄く無理すればそれっぽい聴き方も出来なくはないけれど
実際はもっと鋭利でヒリつくような緊張感のある音楽ですね。
'90年代オルタナティブサウンドの影響は確実にあるでしょう。
ジャズロック的な優雅さや英国的シニシズムというよりも
(やっぱりポートランドだから?)米国パンクの有する諦観と凶暴性が
支配的だと感じます。だけど曲は全部変拍子、みたいなw

とにかくかなり変なバンドであることは間違いなく、
聴き手に強い印象を残すことも確実かと思われます。
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ちょっといい傘が欲しいのよ [新譜]

梅雨に向けて。



Emeth, Truth and Death / BLACK OATH / 2022
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うひょ!?何の予告もなく突然出たので吃驚しました。
他バンドとのスプリットで7"やカセットテープを出してはいたものの
フルアルバムとしては'18年の“Behold the Abyss”('18-同年12月5日作文)
以来4年振り、5枚目のスタジオ作となります。
元々クレジットが不親切、且つ通名を使うバンド故
なんとも言えないところはありつつギタリスト2名の名前が変わっています。
まぁここの肝はリズム隊の二人ってことで間違いないのですが
上物によってアウトプットにやや振れ幅が出ちゃうのもまた事実であります。
あ、レコ社もまた変わってますね…アルバム全部違うトコから出てんのか。



この映像、
絵動きがランダムで(途中挟まれる静止画のカットが妙に長かったり)
見てると段々不安になってくるわ。

前作同様全般にソロらしいギターソロは少なく、
しかし曲毎のリズムバリエーションに富んでいるので
ズルベタ一辺倒のドゥームメタルとは一線を隔しています。
これを要するに楽曲はかなり充実していると言えましょう。
個人的には一部楽曲にチャーチオルガンの音色が戻って来たことが大変嬉しく
(“Death Haze”)、出来れば ↑ に貼るのもそれにしたかったのですが。

何にせよこの人達特有のの背徳、背教感は
相変わらず僕の心の琴線をぶるぶると震わせます。
やっぱりイタリアのバンドだからなのかなぁ。



Getting Nowhere Fast / JOHN BEAGLEY / 2022
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BEAGLEY ANANIA名義の“On The Bridge”について先日(2月28日)書きました。
で、そちらには合わないという理由で外された6曲を
John Beagleyのソロ名義で出したのですと。



うん、確かにプログレ感はBEAGLEY ANANIAに較べても更に薄く
立ち位置としてはほぼポップな歌モノと言えるのではないでしょうか。
エレポップにかぶれたAlan Parsonsみたいな?
…んー、上に貼った曲は全然違う(ボーカルも客演だし)ので
ピンと来ないかも知れませんが。

いずれにせよここ2年ばかり、この人の積極的なリリースは
界隈でもう少し注目されても良い筈で、
やっぱり物理盤が無いと認知度の面で不利なのですかねぇ。



ついでにもう一つ貼っておきましょうか。



KARMAMOIが単発で新曲を発表しました。
バンドはこの新曲を3月の終わりにリリースした後
つい先日にはライブも行ったようで、活発に動いているみたいですね。
因みにKARMAMOIについては去年の6月29日に
アルバム“Room 101”のことを書いています。



と、こんな感じでズルズルGWに突入していくのだな。
今年は正月に続いて妻が単身帰省するから独りでだらだらするんだもんね。
…なんだ、いつもと同じかw
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悪魔くん [新譜]

世代的にモノクロTVドラマの再放送が起点なので
他のアニメとか、水木しげるの原作ですらちょっとピンと来なかったり。
主演の子役、金子光伸がジャイアントロボの大作少年と同じ人だったとか
相棒メフィスト(の中の人)がシリーズ途中で交代
(初代吉田義夫が病気で降板したのだそうです)したとか、
プロダクトのバックヤードが異常に気になるおかしな子供だった僕にはとても興味深く、
またなにしろ単純にお話が物凄く怖くて面白かったんだよね。
第6話の「首人形」(マネキンが首ポロして一つ目に変貌して襲ってくる)とか、
未だに良く覚えているもの。
えーと、なんでこんなことを書いてるのかと言えば…



Earth Infernal / SATAN / 2022
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Angel Witchと並んでNWOBHM暗黒面の醍醐味を今に伝える巨頭、
活動再開後4枚目となるスタジオアルバムです。
40数年を一日の如くマイノリティの世界を生きるその姿は
清々しいほどに美しいのだ。



まずトータルなサウンドプロダクションが
意図的にやや籠った抜けの悪さを主張しているのがもう、
どうしようもなくブリティッシュ。
加えて常軌を逸したようなコード進行も
古き良き英国B級ハードロックが得意としたスタイルそのもので、
今にして改めて、これって相当お洒落なんじゃないかと思うのは僕だけですかね。
枯れることなく怪異なリフを産み出し続ける
両ギタリスト(Russ TippinsとSteve Ramsey)は
過度な歪みを嫌ったナチュラルなディストーションサウンドで
誤魔化しのきかない演奏を易々とこなしていきます。

Sean Taylorの性急に突っ込んでいくリズムはしかし、
演奏の土台にあって圧倒的安定感。
オーソドックスながら歌心のあるGraeme Englishのベースは
奇怪なギターリフの裏でぬるぬると動きます。
いや、このリズムセクションはもっと評価されてもいい筈。

そして浪々としたミドルトーンからあらぬ方向へぶっ飛んでいく
Brian Rossのボーカルが乗ればめくるめく面妖な世界が…



こんなんどう聴いても文句なしにカッコイイじゃないか。
抒情的に攻めようとしても泣きに徹しきれず、
結局はいびつで不穏な暗黒面に収斂していくのが堪らんわ。

嘗てはSATANという、あまりにもティピカルなバンド名を恥じて
BLIND FURYやPARIAHと改名しつつそのアウトプットを
微妙に軌道修正(歌い手の変更も含む)したバンドはしかし、
クラシックラインナップでの活動再開後は一縷の迷いなくSATANの名の下で
オカルトメタル一直線を貫いています。実に潔し。

随分前に僕はSATANよりもBLITZKREIG(Brian Rossが兼務するバンド)の方が…と
書きました。今も基本そう思いたいところはありつつ、
段々身内のファミリーバンドみたいになってきちゃったBLITZKREIGは
ここ数年僕の好みからは徐々に外れてしまい、
頑固一徹なSATANによりプロフェッショナルの心意気を感じるようになりました。

うーむ、オチがいまいち。

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急に春が来た [新譜]

…っても、もう彼岸だもんな。くしゃみ一発で目覚める季節の到来だぁ。



Sapiens- chapitre 3/3 : Actum / JPL / 2022
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25日のリリース予定が2週間繰り上がったので週末にがっつりと聴き込んでみました。
フィジカルもそろそろ届くんじゃないかと思います。

'20年4月21日作文に書いた“1/3 : Exordium”、
'21年3月12日作文の“2/3 : Deus Ex Machina”に続いていよいよ完結編の登場です。
本作にはお馴染みのNEMO勢に加えて幾人かの客演があり、
それ程に力の籠った1枚ということなのでしょう。

先に3枚トータルの話をしちゃいますと
ほぼ1年に1作という規則的なペースを堅守したことで
一貫したサウンドプロダクションを維持出来たことが非常に意義深く、
だって今どきポストロック的な音響に全く接近することなく
プログレの超大作が完成したというのはなにより凄いことだと思うのですよ僕は。
題材については普遍的且つ中庸なものですが
それ故個人の哲学を色濃く反映することが可能であるとも言え、
まぁ僕のような年老いたぼんくらにはやや面倒臭く感じる部分もあるのだけれど。
どっちにしろ仏語はちんぷんかんぷんなのでどうにもならないです(苦笑)。
そしてどんなにシンフォニックでオーケストラルな楽曲であっても
最終的にJean-Pierre Louvetonがロックギタリストであることを
絶対に譲らない姿勢が圧倒的に素晴らしいのだ。

-続いて本作単体について。
アルバムの後半を5パートからなる大曲で占めたのは少し意外でした。
前作に2部構成の曲はあったもののこれまでの流れからすると、
(長尺曲はあっても)単曲の積み重ねで最後まで行くのだろうと勝手に思っていたので。
3部作全体を締めるという意味でも大変に効果的で精緻に練られた良い曲だと思います。
前半4曲に比してややティピカルな嫌いはあれど、
違和感なく聴き進められる程度にグラデーションはスムーズです。

一方前半の4曲はブルースベースのロックな味わいをより多く露出する感じで、
正直Jean-Pierre Louvetonらしさは断然こっちの方にあるよな。



それでもちゃんとプログレなのがこの人の凄いところで、
決してPINK FLOYDスタイルの劣化コピーに陥らないのが、ね。
極々個人的な感想として、アルバム単体としては前作に半歩譲るものの
もの凄く良いアルバムであることに間違いはありません。

都合3年、なにしろこの連作は相当に高いレベルで完結したと思います。
本作を集中して聴いた後、3枚通しでも聴いてみたのですが
安易なテーマメロディみたいなものに頼ることなく、
それでも揺るぎない一貫性をきちんと確立していると思います。
そのベースにあるのは間違いなくロックのダイナミズムであり、
その自覚を持ったミュージシャンってのはやっぱり強いよなぁ。
まぁ、僕の好みによるところは凄く大きいと思いますが。

次はNEMOの新しいのを聴いてみたい気がしますねぇ。



後は唐突にLATTE E MIELEをちょこちょこ聴いたりして。
ディスコグラフィの歯抜け('90年代にMELLOW labelから出たヤツ)を
デジタルで埋めたりしながらLATTE MIELE 2.0まで一通り流してみたのだけれど、
今更ながら僕かなりこのバンド好きだったんだなぁ、という再発見。
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じゃあこの作文はどうやって書いた? [新譜]

現在プライベートPCが故障中でして。
目下工場へ里帰り中なのでここの更新もままならず。
27日の夜には戻るみたいですがちょっとだけ不便です。
妻は自身で新調したiPadを弄りながら
デジタルデトックスでしょ、とか言ってましたが(ぐぬぬ)
まぁ僕とてYouTubeとかの映像系はゲーム機で見れちゃうし、
困るのは音楽の取り込み→WALKMANへの転送が主なのですがね。



The Monster Roars / MAGNUM / 2022
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ライブやら企画編集盤やら、なんだかんだ繋ぎながら
毎年アルバムをリリースしているMAGNUMですが
純然たるスタジオ録音の新譜としては
'20年の“The Serpent Rings”以来2年振りとなります。

今作はボックスセット(結成50年記念)にしか付いていないボーナスCDが
どうしても聴きたかったので仕方なく(?)そちらを購入しましたが、
他に本編のカセットテープとか入っていてだいぶ困惑しちゃうのだ。
しかもこの箱にはバンドロゴをあしらったマグネットも同梱されていて、
これを企画した人はカセットテープってのがどういうものか
知らないんじゃないかと心配になっちゃいます。
僕はどうせカセットのシュリンクを破らないからいいけれど、
いざ聴こうとしたら音がしないなんてトラブルが起きたらイヤだよな。
-と、やや余計な話でしたか。

そしてジャケットアートがRodney Matthewsの絵じゃないというのが
少しばかり僕を不安にさせます。替わりは…なんだAl Barrowなのか。
前作でベーシストの座をDennis Wardに譲ったものの
デザイナー、写真家としては未だバンドとがっつり係わっているようで
良かった良かった。

あ、えーと、中身よね。



特段奇抜なことはやっていなかったので安心したりして。
しかしこの張りたるや、今年75歳になる人の歌声ではないよなぁ。

そしておまけディスクですが、こちらは3曲入り。
まずは'88年のアルバム“Wings of Heaven”の冒頭を飾った
“Days of No Tust”の再録音版。
Tony Clarkinが録り直したかったようで、
オリジナルの燦然たる産業ロックを幾らか渋目に再演しています。

次は“Sweets for My Sweet”。
'75年、MAGNUMがCBSと契約して初めて出した7インチシングルの音源。
いや、これはなんつーか…MAGNUMってTHE DRIFTERSのカバーでデビューしたんか。
ボーカルもなんかBob Catleyっぽくないな、と思ったら
この曲は当時のベーシスト、Dave Morganが歌ってるのね。
うーん、これは知らんかった。

そしてそのDave Morganが発掘した古いテープに収められていた3曲目は
誰もその曲名を思い出せないそうで、しかし'78年1stアルバムに収録された
“Baby Rock Me”っぽいノリからテンポを落として展開する構成は
実に当時のプログレハードな味わい。

と、まぁよっぽどのマニア以外には必要のない代物ですが
僕は当然必要なので、これを聴けてとても良かったですw
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