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シリーズ 盤無き好作 その2 [シリーズ作文]

ロシアがウクライナに攻め入ってもうすぐ2年。
未だ終結の気配すら感じられない中この国ではあまり報道もされなくなり、
実際のところどうなってんだ?
という疑問と不安はありつつも
やはり我がこととして捉え続ける難しさはあるよなぁ、と。

普段こういう話からは意図的に距離を置く僕が
なんでこんな話を書き始めたのかと言えば

Polemosophy / LA HORSA BIANCA / 2024
lhrsbanc.jpg

ウクライナのバンドで、'18年頃から活動しているようです。
本作は「戦時下における(一時的な)空想による逃避」のための
組曲とのことで、僕はコレをどういう気持ちで聴いたらいいのか
分からなくてちょっと困ったのです。
まぁでも、結局単純に音楽として面白がれるかどうかしかないんだよね。



まどろむようなサイケデリアは
徐々に凶悪な歪みサウンドに取って代わられ、
その狂騒も突如元の静けさに飲み込まれてしまう。
うーん、これ、やっぱり気軽に聴けるもんじゃないなぁ…
と、冒頭から僕の脳味噌は色々考えちゃうのだけれど
音楽そのものへの没入度は高く、なかなかの混乱状態に陥ります。
しかしこのふわふわとした落ち着かなさ、
腰の据わらない気持ちの悪さこそが本作の肝であり
バンドの創作意図に沿ったアウトプットなのだな。

他の幾つかの曲ではバンドのかつての姿
(スラヴの薫り漂う快活なプログレサウンド)を垣間見せつつも
やはりどこか閉塞した感覚があって
過去作とは一線を隔しているように思うのです。
しかしなにしろ聴くのを止められないのは
この緊張と弛緩の繰り返し(のサイクル)に
底知れない魅力を感じているからなのでしょうねぇ。



安易に安寧へ向かうことなく徹底的にもがきながら
それでもどこか出口に向かおうとする姿勢を
アルバムの最後に示したのは非常に現実的で、
バンドが本作を「空想による逃避」としつつも
「厳然たるリアル」から逃げない(逃げられない)様子が伺えます。
これはまさに時代と並走する音楽であり、
そこから聴き手が何を思考するのかが試されているような気がします。

僕は…この人達には過去作のような曲をまたやって欲しいと、
そんなことを思ったりした訳ですが本作を入り口としたことについて
なんら後悔はなく、およそ優れたミュージシャンってのは
いかなる状況下にあっても優れた音楽をやるものですね。

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新シリーズ 盤無き好作 その1 [シリーズ作文]

bandcampってのは本当の底なし沼なので
深みにはまるとかなりヤバいのですが、
まぁ僕のような者にとっては大変居心地の良い処でございます。
で、日々アレやコレやと探っていますと
時々おっ!と声を上げるようなアルバムにぶつかることがあります。
今までもそういうヤツについて書いてきましたが、
そうした中でもフィジカルの無いものについて
シリーズ化してみたらどうだろう、と思いついちゃったのです。

物理盤が無いということは
当然ながらレコ屋というチャンネルが使えないということなので、
これは(特に我が国では)広く知ってもらうことに対しての
大きなディスアドバンテージに他なりません。
まぁ広く知らせるということについて
このブログが果たす役割は完全なる「無」でありますが、
捻くれ者の好事家がこのネットの最果てにおいて
こんなイイのがあるのにどうせ皆聴いたことないんだろwとほくそ笑む、
そんな底意地の悪いシリーズになればいいな…なんて思っています。

-では、いってみよう。

Sense Reversed / MASTER KEY / 2013
mstrkysr.jpg

ギリシャの2人プロジェクト。
ドラマーのNikos Tavalionとそれ以外全部担当のTakis Tavalionは
名字が同じなのでやっぱり親族の類なのだろうと推測します。
こちら現状での唯一作となりますが、これCDがあったら
国内の各専門店は絶対放っておかなかったと思います。

ド頭から滂沱の如く流れ出すメロトロン、
そしてこれでもか!とガンガンに泣き叫ぶギター(ちょっと喧しい)。
歪んだオルガンが間を繋いだ後は次々と表情を変えつつ展開する
王道ド真ん中のクラシックなシンフォニックプログレ。

こころして聴くべし ↓



フェードアウトは個人的にちょっと気に入らないけれど
今どきこれを正面から思いっきりぶつけてくるのが凄いよな。
完成度はすこぶる高く9分半がアッという間。
他の3曲もそれぞれ長尺(一番短くて7分ちょい)で、
トータル全4曲33分のオールインストゥルメンタルが
グイグイと聴き手の耳を惹き付けます。

マルチ奏者のメインがギターであることは間違いないと思われ、
一部にメタル由来の歪みサウンドが散見(聴)されますが
それとてがっつりオールドスクール(せいぜい'80年代)なので
あまり気になりません。
キーボードの音色についてもアナログ時代に拘っているのが
一目(聴)瞭然で、実に徹底しています。
逆に申せば、
これを(シンフォ)プログレと言わずしてなんとする?
という固い信念がアウトプットを明瞭化しているんだな。

いやこれ10年前の一作ですが大変見事なアルバムですよ。
正味の話、好作どころか間違いのない傑作でしょう。
これが見逃されていたというのは実に勿体ない話。
願わくばこのMASTER KEYが新たな創作に向かってくれれば…
と、そんな風に思う僕です。

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アフターサービスもバッチリなのだ [シリーズ作文]

という訳(どういう訳?)で今日は

FISHのソロ その後

まぁいうてもガッツリ書くって感じでもなくて、
ちょっとした補遺みたいなものですが。

まずはお浚い。
FISHのソロ その1
FISHのソロ その2
FISHのソロ その3
FISHのソロ その4
FISHのソロ その5
FISHのソロ その6
FISHのソロ その7
FISHのソロ その8
FISHのソロ その9
FISHのソロ その10
FISHのソロ その11
FISHのソロ その12
FISHのソロ 番外(余談)と総括

これに加えて幾つかの関連作文があるので、我ながらなかなかの大作。



Fishのフェアウェルツアーがコロナで中止の憂き目にあったことは
「その12」でも軽く触れていますが、
やはりやり残した仕事という気持ちは本人の中に燻っていたようです。
そうした背景からコロナが一応の落ち着きを見せた'21年の終わりに
7日間の英国ショートツアーを行い、
これをもって真の区切りを付けることになったのです。
そのうち11月24日のロイヤルレミントンスパ公演はメディア化されており、
しかしこれについては今日は省きます。
というのもFishの実況録音盤については別途書いた方がいいかもと思い、
現在別文をまとめ始めたところです
(結構面倒臭いのでちょと時間掛かると思います)。

現在はYouTubeでだらだらと日常を喋る
“Fish on Friday”(概ね月イチ更新)で
その元気な姿を確認することが出来ますが
当然英語なのでやっぱり何言ってるか全然分かんないし(苦笑)。

んー、じゃ結局なんの話?と問われれば「その10」に追加です。
昨年来Fishは“13th Star”と“A Feast of Consequences”の
2タイトルをアナログ化して再発することを計画し、
これに際して“13th Star”については新規リミックスを施しました。
そしてレコードのリリースに先行してDigital Deluxe 2023 Remix版を
各音楽ストリーミング/DLサービスで頒布したのです。

本編リミックスについては僕のような者が聴く分には
そこここに違いを見つけることが出来ますが
全編の印象が一変するようなものではないので
どちらか一方だけを聴いても全然問題ないと思います。

そしてボーナスは全部で10曲。
'07年に録音されたものを中心にデモが9曲と
Fish Head Clubツアー('10)から1曲(幾つかの重複曲アリ)。
これがどれもなかなか興味深くて、
デモとは言えミキシングまでそれなりにちゃんとやっているので
単純に別バージョンとして楽しめるのがイイんだな。



-で、ですね。
レコードについてつい先日Fishからアナウンスがありまして、
なにやら製造業者から送られて来たサンプル盤に擦れやら傷があるのだと。
しかも一部ではなく全てのサンプルに同様の問題があったのだそうで、
更に追加で取り寄せたサンプルでも改善されておらず
こんなもん売れるかぁ!と久し振りに怒髪天を突いたらしいです。
結果レコード2タイトルについては一旦リリースを中止し
予約者には返金処理をするとのこと。
完全手売りだから結構大変みたいでなんとも気の毒です。

結局“13th Star”のフィジカルについて
今もなかなか手に入れにくい状況は元の作文時から変わっていないのですが、
デジタル版であれ新しいリミックスが出ているという情報は
是非書き足しておきたかったのです。



※以下2023年7月28日に加筆しました。

13th Star 2023 Remix / FISH
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CDが出ました。まぁそりゃそうだよな。
本編10曲の単体Standard Editionと
CD×3+Blu-rayの限定Deluxe Editionの2フォーマットです。

デラックス版のCD2枚目は“Demos and Acoustics”と
題されている通りの中身で13曲、
3枚目は'08年6月Nearfest出演時の演奏を中心に3公演のライブを編集した12曲。
そしてBlu-rayには本編5.1chミックスと'08年Nearfest公演の全編
(勿論映像アリ)が収録されています。
更にデラックス版のみオプションでFishのサイン付き
(+£20.00をどう思うかはそれぞれでしょうねぇ)を選べるそうです。

いつもの通り完全手売りのみなので国内各店に並ぶことはほぼないでしょう。
僕はDX版(サイン無しw)をポチっと行きました…改めて円安が厳しいねぇ。

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再発しないかな シリーズその27 [シリーズ作文]

Brute Force / VARIOUS ARTISTS / 1980
va brtfrc.jpg

EMIが“Metal For Muthas”をリリースしたのに呼応して
MCAが出したNWOBHMのコンピレーション。
MCAは本作を切っ掛けにDIAMOND HEAD、FIST、WHITE SPIRIT、
そしてQUARTZのアルバムをリリースした訳ですから
青田買いとしてはかなり優秀だったと思うのです。
まぁそれらの音源については今現在全然普通に聴けちゃうので
僕が再発を望むのは別の曲が聴きたいからなのですけど。

以下トラックリストにメモを付記します。

A1.It's Electric / DIAMOND HEAD
自主盤1stアルバムからそのまま持って来たトラック。

A2.Brain Damage / FIST
アルバム“Turn The Hell On”('80)からカットされた
シングル“Forever Amber”のB面にも収録されていますが
初出は多分こっちでしょう。
'92年に“Turn The Hell On”がCD化された際にボーナス収録され、
以降の再発盤でも聴くことが可能です。
因みに'92年の初CD化は我が国MCAビクターが行いました。

A3.Let It Rip / RAVEN
この曲は結構長い間本作でしか聴けなかったのですが
'02年にcastle Musicが1stアルバム“Rock Until You Drop”を
再発するに当たってやっとボーナス収録されました。
このアルバムについては周辺音源を含めて
HNE Recordingsが昨年('22)CD4枚セットの小箱を出しているので
それがあればなーんも問題ありません。

A4.Gotta Get Back to You / PROWLER
これも結構なレア音源だったのですが…。
エセックスの4人組はこの曲含む4曲をChris Tsangaridesのプロデュースで
録音しますが結局MCAに残れず、他の曲は残念ながらお蔵入り。
他にもたくさん居た同名バンドのうちの一つとして
なんとなくその存在を知られている程度でした。
しかしこちらも昨'22年に突如HNEがアーカイブ音源集(“Reactivate”)を
リリースしまして、僕はそれで初めてこのバンドの音を聴いたんだよね。

A5.Fantasia / SLEDGEHAMMER
'80年に自主リリースしたシングル“Living in Dreams”のB面曲。
これはどっちのリリースが早かったのか僕には分かりません。
因みにこの曲はJohn McCoyのプロデュース。
一方でEMIの“Metal for Muthas”('80)にも“Sledgehammer”が収録されており、
両社天秤に掛けて上手くやろうとしたのがいけなかったのか
'83年にリリースされた唯一のアルバムは弱小ILLUMINATED Recordsからでした。
そちらも正規再発は叶っておらず、今このバンドを聴くのは
結構難しい事態に陥っています。
ただ、アルバムのドイツ製ブートCDがあってそれには本曲も収録されています。

A6.Breakdown / Colin Towns
僕的目玉。本当は同タイトルの7"シングル(MCAからのリリース)が
あればそれが一番欲しいのですが取り敢えずこの曲だけでも…。
アルバム“Making Faces”('82)に繋がっていく録音で
Bernie Tormeマニアとしても外せないところなのだ。
まぁ、NWOBHMじゃないんだけどw

B1.Earthquake at The Savoy / Mick Underwood
僕的目玉その2。Colin Townsと同じくGILLAN絡みの1曲。
プログレファンにはQUATERMASSの…って言った方が分かり易いですかね。
phonogram傘下のAutobahn Recordsから同曲の7"シングルが出ていますが、
ちょっとその辺の絡みは分かりません。
これもBernie Tormeマニアとしては聴いておきたいところなのです。
…まぁ、NWOBHMじゃないんだけどw

B2.Back to The Grind / WHITE SPIRIT
NEAT RECORDSの同名シングルより。RAVENは獲得に失敗(?)しましたが
こちらはMCAからデビューアルバムをリリース('80年)。
EMIの“Metal for Muthas Volume II”('80)にも
“High Upon High”が収録されていたことを考えると
なかなか激しい争奪戦だったのでしょうかねぇ。
'92年のアルバムCD化(FISTと同じくMCAビクターから)のボーナスとして
本曲も収録されています。



B3.Can't Say No to You / QUARTZ
'80年リリースのアルバム“Stand Up and Fight”に収録されているのと同じ。

B4.Hold On / XERO
こちらもEMI“Metal for Muthas Volume II”('80)に“Cutting Loose”が…。
そしてSLEDGEHAMMERと同じくメジャーディールを得ることなく消えていきました。
'15年にギリシャの好事家向けレーベルno remorse recordsが
500枚限定で音源集を出していますが
いまいち詰め切れていない内容なので僕はちょっと不満です。
-あ、この曲は聴けます。

B5.Day To Day / CRYER
後にFORCEと名前を変え、'84年にHEAVY METAL RECORDSから
リリースされるアルバム“Set Me Free...”に収録されているのと同一トラック。
ってことはこれ、MCAでお蔵になったものを
HEAVY METAL RECORDSが上手いことアレしたってことなんですかね。
こちらも'15年にno remorse recordsが500枚限定でCD化再発(CRYER名義)。
CRYER唯一の7"シングルとFORCEの“Set Me Free...”を収録した完全版です。

B6.Black Queen / MAY WEST
これ以外に音源が全く残っていない謎バンド。

と、まぁそういうことで、
割と簡単に聴ける曲とそうでないのが混じっているのです。
これなぁ、これなんとかして欲しいよなぁ。
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脈絡ナシはいつものことさ [シリーズ作文]

Voyages / PAT HEALEY / 2023
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むむむ、これまた珍妙かつ興味深いハイブリッドが出て来ましたよ。
パッと聴いての第一印象はAllan Holdsworthです。もうそれは間違いないの。
なんだけれども、そのギターを取り巻くリズムやキーボードが
ポストロック的サウンドでエクスペリメンタルな音空間を演出するという
とんでもないSci-Fiフュージョンがちらほらと見え隠れする怪作なのだ。



しかしこのPat Healeyさん、ポートレイト写真ではGibson SGを抱えていて
え、まさかSGでこんな音出してんの!?と驚かされたりして。
なんというかなかなか一筋縄ではいかない感じですが
このアウトプット、結構面白いと思っちゃったのですよ僕は。

元々PATRICK HEALEY'S LAZARUS PROJECT名義で活動をしていたようで
ソロ名義になってから数えても本作が3枚目ということのようです。
そこそこキャリアは積んでいるってことですね。
前作には管の客演があったりしてもう少し幅広なベクトルでしたが
本作はPat Healeyとドラマーがシンセを兼務しつつのトリオ編成で
ぐっと的を絞って来た感じ。

まぁだからと言って僕がこれを入り口にして
例えば音響派ジャズに向かうのかと言われれば多分そんなことはない訳で
やっぱりこれも、結局はプログレの範疇なのだろうと思います。



-話変わって。
WAYSTEDをね、ダラダラと聴いていたのですよ。
やっぱぼかぁFin Muirのボーカルが好きだなぁ、なんて思いながら。
で、この人のWAYSTED以前キャリアってどうなんだろ?って疑問が
ふとよぎった訳です。勿論すぐ調べてみましたよ。

Flying Squad / FLYING SQUAD / 1978
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'78年の唯一作。Ian Muir名義での、これがキャリアのスタートです。
なんと超大手Epicからのデビュー、プロデューサーはFrancis Rossi(!)と
当初はかなり期待されていたように思われます。
まぁ時代的に言えばやはり圧倒的にニューウェイブ成分が足りず、
全然売れなかったであろうことは想像に難くありませんが。

YouTubeでアルバム丸々聴いてみましたがかなり出来の良いハードロックで、
英国のみのリリースはちょっと勿体なかったんじゃないかと。
プロデューサー由来のブギーが何曲か含まれていることから
日本での人気を危惧した?んーどうでしょうね。
'78年と言えば我が国CBS SONYがQUIET RIOTの1stをリリースした年で、
まぁ商機がどっちにあるかと問われればそりゃQRってことに
なっちゃうのでしょうけど。

もっとも英本国(バンドはスコットランド出身)においても
オリジナルレコード以降一度も再発されておらず、
え~コレなんとかなんないの?って感じです。
てな訳でこれを久々の「再発しないかな シリーズその26」とさせていただきたく。

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久し振りに豆源のおとぼけ豆食った。案の定止まらなかった。 [シリーズ作文]

それからきなこ大豆ってのは初めて食べましたが、これも美味かったなぁ…
というデブの独り言。



バンドの名前が国や地域の名称って、なんか違和感ありませんか?
別にバンド名なんてなんでもいいんだから国名や地名だって全然良いのだけれど、
例えばスイスのバンドなのにCHINAとかさ、えっ、なんで?って思っちゃうのです。
-と、そんな枕から久々の

再発しないかな シリーズその25

Touch the Night / MARSEILLE / 1984
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英国のバンドなのにMARSEILLE…んー、やっぱり分からんw
まぁまぁまぁ、それはともかくとして。
'77年にデビュー、'78年と'79年にアルバムを出しましたがその後暫く沈黙。
リズムセクション以外のメンバーを入れ替え、
ツインギターからギター+キーボードへと編成も弄っての再出発作がコレ。

で、本作の肝はなんと言ってもボーカルがSav Pearseだってことです。
Sav Pearseと言えばHIGHWAY CHILEの“Rockarama”('85-'16年4月26日作文)で
歌っていた人で、僕は長らくの間Sav Pearseのプロキャリアは
HIGHWAY CHILEのみだと思っていたのでかなり驚いたのです。



なんと申しますか、非常にカッコイイじゃありませんか。
もっと産業ロックに寄せたスタイルの曲もかなり完成度が高く、
HIGHWAY CHILEにDEF LEPARD風味を定着させたのは
実はSav Pearseだったのかも知れないなぁ、なんていう推測も成り立ちます。
因みにSav Pearse加入前のMARSEILLEの方はと言うと
2ndはブギーベースのハードロックだけどやけにメロディアス、って感じで、
やっぱり(初期)DEF LEPARDっぽいところも散見(聴)されるのですがね。

話を戻して、本作のプロデュースはJohn Verityの手によります。
それを踏まえてクレジットを再確認するとキーボードのAndy Wellsは
VERITYの“Interrupted Journey”('83-関連作文幾つかアリ)に参加しており、
結局僕の好きなヤツってのはどこかで繋がっていっちゃうんだな。

バンドは結局本作をもって解散。
'10年になって突如ツイン編成時代のギター2人が再結成作を出しましたが
それきり今日まで音沙汰ナシです。

えー、本作オリジナルLPはULTRA! NOISEというマイナーレーベル
(初期MAMA'S BOYSとかBABY TUCKOOとか、いいカタログばかり持っているんだよね)
からのリリースだったので再発は難しいものと思われましたが'03年にcastle MUSICが
バンドの活動を俯瞰する編集盤“Rock You Tonight”を出しておりまして、
幸いにも本作は1曲もカットされずに(1stと2ndは間引きアリ)収録されました。

しかし僕はこれを後から手に入れるのにかなり手間取ったのです。
ちょっと調べてみたら現在は結構いい値段になっちゃってるみたいだし。
なのでここは一発、新規にリマスターして単体で再発してくれないかと願う僕であります。



あー、再発と言えば。
ユニバーサルの「初CD化&入手困難盤復活!! HR/HM」シリーズがすこぶる好評のようで、
この3月のリリースでなんと第5弾ですって。
毎度カタログチョイスの玉石混交っぷりが凄くて
僕はニヤニヤしながら、こりゃ滅茶苦茶だぁ、とか呟いている訳ですが
結論から言えばその脈絡のなさが成功の秘訣だった気がするのです。
結局、どれが玉でどれが石かは人によって違うので
あまり意味を持たせた選択をしちゃうとパイが小さくなっちゃうんだな。
それでなくてもレコ社再編によって膨大なタイトルを抱える現状、
そこまで深く考えて選ぶってのももはや無理筋だしね。
新規のリマスター等、新たな手間をかけない代わりに廉価で出すというのも
潔かったと思います。

しかしまだ(僕的に)出すべきヤツはたくさんあるので
このシリーズはなるべく長く続けてもらいたいです。
特にコンピ盤はまだまだ大穴があるのだよ。
Polydorの“Monsters of Rock”とかMCAの“Brute Force”とか。
リリースから云十年を経て再度こうした盤にポータルとしての役割を負わすってのは、
僕は大いにアリだと思うのだけどなぁ。
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情報をアップデートする その2の2 [シリーズ作文]

THE FOUR HORSEMENの巻、後編です。



オリジナルラインナップ崩壊後、
HaggisはLITTLE CAESARのRon YoungにTim Beattieという歌い手を紹介されます。
この人は歌だけでなくハーモニカやラップスティールの演奏も出来た点が買われ
バンドの新たなフロントマンの地位を獲得しました。
Haggisは新編成でのアウトプットを試すべくDimwitを招集しますが
残る2人はこのラインナップへの関与を否定、
代わりにRick McGhee(ギター)とDuane D. Young(ベース)がリクルートされました。

'92年の後半と翌'93年、バンドは新しいベクトルの確認に時間を費やしたようです。
Tim Beattieの参加によってバンドサウンドがより泥臭いブルースに向かったのは明白で、
残念なことにオリジナルの面影は結構薄れちゃったのね。
こうした中DimwitとRick McGheeが脱け、Haggisは新たな補充を余儀なくされます。
THE CULTの元同僚、Lez Warnerをドラムに据えて暫くは4人でやっていたようですが
今一つ物足りなさを感じていたHaggisは
4人編成のリハーサルテープをDave Lizmiに送り、みごとバンドに復帰させています。
ただこの編成も長くは続かず、最終的にはTim Beattieの友人である
Mike Valentineが穴を埋めることになりました。

このように出入りの激しかった新編成は'94年の秋頃までバタバタやっていたようで、
この間(Lez Warner参加以降)に録音された音源をまとめたのが

Daylight Again / 2009
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10曲収録。うち9曲のリードギターはDave Lizmiによるものです。
Tim BeattieのボーカルはFrank C. Starrよりもかなりスムーズで癖がなく、
正直特筆すべき点はあまりないように思います。
しかし唯一Mike Valentine入りの編成で録音された
11分にも及ぶ〝Amazing Grace”は鬼気迫る名演と言って差し支えなく、
これが残ったのは勿怪の幸いでした。

結局この編成によるFOUR HORSEMENが陽の目を見ることはなく、
Haggisはロックンロールの世界から離れることを決意したのです。



一方、Dave LizmiはL.A.でFrank C. Starrの身辺が落ち着くのを待って
別途THE FOUR HORSEMENの復活を画策しました。
Pharoahなるベーシストと、ドラマーにはRandy Cooke
(Lee AaronやRik Emmettのソロなどに参加…お察しの通りカナダ人)を迎えて
'95年の夏に録音されたのが

Gettin' Pretty Good...At Barely Gettin' By... / 1996
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アルバム冒頭、Johnny Winterの〝Still Alive and Well”
(曲を書いたのはRick Derringerだけど)のカバーが
ガツンと決まった時点でHaggisには申し訳ないけれど
やっぱコレだよな!って思っちゃいますねぇ。
結局はFrank C. Starrの歌こそがTHE FOUR HORSEMENの
アイデンティティそのものだったことをいみじくも証明しちゃうんだもん。
…いや、もっと正直に言うとFrank C. Starrの歌声も急激に渋さを増していて
デビューアルバムにあった艶々しい輝きは、実はもう無かったりするのです。
これ、あんまり認めたくないんだよね、個人的に。

そんな本作は'94年9月に薬物の過剰摂取で亡くなった
バンドのオリジナルドラマー、Dimwitに捧げられたアルバムであり、
そしてまたFrank C. Starrの遺作でもあります。

アルバム完成後の'95年11月、
サンセットストリップでバイクを運転していたFrank C. Starrは
飲酒運転の車に衝突され頭部外傷による昏睡状態に陥ります。
Dave Lizmiは早期の回復と復帰をを期待しつつ'96年に本作をリリースし
Ron Youngを代役に立ててツアーもやったようです。
しかし結局Frank C. Starrはその後一度も目醒めることなく
'99年6月に亡くなりました。
これに伴ってバンドも敢え無く解散したのです。

-なんたる悲劇か。

後年、HaggisはFrank C. Starrとの決別に後悔を滲ませ
Dave Lizmiとともにバンドの映像をアーカイブし、音源を編纂して再発しました。
今般の作文に当たって聴いているのはこの際の再発盤という訳です。
'12年再発の〝Gettin' Pretty Good...”には3曲のデモが追加収録されています。

因みに〝Rockin' Is Ma' Business”のアンサーソングである



は'13年公開の映画「G.I.ジョー バック2リベンジ」に
挿入歌として採用されたのですと。まぁ、なんとも言えんわぃ。



-THE FOUR HORSEMENはその表層だけをなぞれば
ほんの一瞬、まばゆいばかりの輝きを放って
アッという間に消えたバンドということになります。
しかしその裏では生き残りを賭けた様々な試行錯誤があった。
才能豊かなミュージシャン達はその個性とアクの強さ故に
ハレーションを起こし散っていったのです。
なんとも切ない話ですが、遺った音は今も素晴らしく豪快でパワフルです。
いいバンドだよ、いやマジで。
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情報をアップデートする その2の1 [シリーズ作文]

えーと…その1は'15年10月23日、BABY ANIMALSについて書きました。
いやいやいや、今更思い出したようにシリーズ化ですか?
さすがに間が空き過ぎだとは思いつつ、まぁでもそういうことなのです。
しかも結構長い話になっちゃったから2回に分けるという…
今回取り上げるのも興味のある人はそんなに多くないバンドだと分かっていながら
結局書くのが僕という人間なのさ。



はい、今回はTHE FOUR HORSEMENです。何故に?って感じですが。
このバンドについてここで初めて触れたのは'10年7月5日。
その後も
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/2212
こんなのを書いたりして、
更には'19年8月8日の作文でボーカリストFrank C. Starrの素性に驚いてみたり。
結局僕、物凄く好きなのですよ、このバンドのことが。

つい最近まではアルバム2枚で終わった人達、という認識だったのですが
先日ふと何気なくDiscogsを見てみたら
僕の知らないタイトルが何枚か出ているじゃありませんか。
げげげ、なんてこったぃ、ってんで慌てて入手の算段。
どうやらバンドのメンバーだったStephen Harrisが手売りしていることが判明し、
…えっ、既知の2タイトルもボーナス入りで再発されてんの!?
あばばば!とか言いながら全ポチ大人買いをしましたよ。
オーダーから約2週間で米国から到着した5タイトルを聴きながら
Stephen Harrisのライナーノーツを読むと
このバンドの太く短い歴史がかなり詳らかになりました。
これはちょっとね、まとめておいた方が良いような気がしたのですよ。



元々ギタリストである英国人、Stephen Harris(通称Haggis)が
THE FOUR HORSEMENのアイディアを思いついたのは
THE CULTのツアーにベーシストとして参加していた'87年のことだそうです。
ブルースをより「ザラつかせた」ようなサウンドを標榜したのだと。
既にL.A.でFrank C. Starrと意気投合していたHaggisは同年12月にCULTを脱け、
ドラマーのKen〝Dimwit”Montgomeryと組んで残りのメンバーを探しつつ
曲を書いたようです。

この3人の邂逅についてはどうやら大物が裏で糸を引いていたようで、
THE CULTのアルバム〝Electric”('87)のプロデュースはRick Rubin。
加えてDimwitの弟がDANZIGのChuck Biscuits(こちらもドラマー)ということで
DANZIGのデビューはDef Americanから、プロデューサーは同じくRick Rubin。
むー、やっぱり物凄いフィクサーだよな、Rick Rubinって。

'88年の殆どを作曲と契約の調整に費やし12月に漸く再合流した3人は翌'89年、
リードギターのDave Lizmi、ベースのBen Papeと共にデビューEPを録音します。

Welfare Boogie / 1989
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Bon Scott期のAC/DCを意識したとHaggisは明言していますね。
「今や誰もAC/DCっぽいことなんかやってないし。AC/DCですらやってない。」

'09年再発CDにはオリジナルEPの4曲に加えて
5曲のデモが追加されており、
アルバムデビューに向けての準備は万端だったことが伺えます。



-然るにレコーディングが遅々として進まなかったのは
主にFrank C. Starrの放蕩が原因だったようですが
他のメンバーもそれぞれ癖が強くて相当難しいバンドだったみたいですね。

Nobody Said It Was Easy / 1991
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上記事実に照らすとアルバムタイトルが大変味わい深いw
Rick Rubinプロデュース、エンジニアはBrendan O'Brien。
当時のトップ制作陣がゴリゴリに詰めたブルースベースのハードロック。
そんなもん悪い訳がないじゃんね。



'09年再発盤には3曲のアウトテイクが追加されています。
アルバムから漏れたのは、まぁ、うん、そうだよねって感じですが
どれも素朴な滋味が染みるのだ。

そしてバンドが迎えた短い絶頂期の演奏を捉えたライブ盤が

Death Before Suckass / 2012
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'91年、ニューヨーク州コホーズでのライブ。
全8曲30分のセットリストはいわゆる前座のそれです。
オーバーダビング無しの生々しい演奏は非常にこなれていて、
実に巧いバンドだったんですねぇ。
Al Greenのカバーを含んでいるというのもなんだか凄く「らしい」感じがして、
いやーこれは良いものが聴けたなぁ。

しかし運悪くも'91年というのはNIRVANAのアレが出た年で
やっぱり商売的にはとても厳しかった。
おまけにFrank C. Starrが薬物疑惑で収監されちゃったりして、
バンドは早々にDef Americanからドロップしてしまいます。
いよいよ決定的となったHaggisとFrank C. Starrの決裂によって
バンドのオリジナルラインナップは'92年の晩春に崩壊、
Haggisは新しい歌い手を加入させてバンドの存続を目論みます。



-続く。
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おまけにしてはちょと長い? [シリーズ作文]

FISHのソロ 番外(余談)と総括

まずは余談から。

役者としてのDerek William Dickは
概ね悪役ばかり演じているようで、
やっぱりあの大きな体躯が醸し出す迫力のせいでしょうか。
僕が実際にちゃんと見たのは



これだけですが、ユルめのコメディ映画にあって
ただ独り無慈悲な(だいぶ間抜けてもいるのですが)
バイオレンスを披露しています。
映画の感想については

※関連エントリー '13年7月3日
 「ぼちぼち暑いのかしら…」

をご参照いただければ(上掲と違うトレイラーも貼っています)。

この関連作文については訂正と補遺がありまして、
まず僕が購入したDVDについてはNTSCではなくPALです。
うちのDVDプレイヤーは
PAL方式も普通に再生出来るヤツだってのを
完全に失念して作文しちゃってますね(←アホ)。
それからamazonのリンクについて。
'20年末の現在もまだ流通在庫はあるようですが
僕が買った頃に較べるとかなり値段が上昇しています。
注文履歴を見たら、僕これ¥2,000弱で手に入れてました。

続いて補遺。
〝Electric Man”の監督、David Barrasは
〝A Feast of Consequences”(その11)DX版に付属する
DVDに収録されたドキュメンタリー映像の
プロデュースと監督も務めており、
それぞれの発表時期からしても
両者が一連の流れで制作されたのは間違いないでしょう。

その他、Fishの役者業については
「ハイランダー 悪魔の戦士」('86)への出演
(MARILLIONのサントラ参加も含む)や
「ブレイブハート」('95)のオファーもあったとのことで、
両方とも結果的には流れてしまいましたが
もしも実現していたら…妄想すると結構楽しいよね。
特に前者、現実ではQUEENがサントラに楽曲を提供した訳で
あれの替わりにMARILLIONてのはとても興味深い。



余談をもうひとつ。

※関連エントリー '20年7月28日
 「久し振りにサブウェイ食ったら美味かったのでまた行こうっと」

にも貼りましたが



この曲について。
耳で聴くだけではなく歌詞を読めるようになって
Fishの意図するところを勘違いする恐れがほぼ無くなったので、
これ、PV映像も含めてロマンチックななラブソングのように
捉えられてしまいそうですが実は全然そうじゃないんだよ
ということを書いておきたかったのです。

'16年にFishの父親が亡くなり、
独り残った母の世話をするうちにこの曲を着想したそうで、
テーマはズバリ、認知症(の早期発症)。
これを踏まえて歌詞を読むとかなり分かり易くて、
男(夫)はもはや彼女(妻)のことを
思い出すことが出来ないままそこに佇み、
彼女もまた記憶の幽霊とともにそこから動けずにいる。

〝Garden of Remembrance”って曲名は、
つまりそういうことなのです。

PVに映るガラスの壁がコロナ禍にあって
図らずも別の意味を持ってしまったことはFishも認めていますが、
これは元々記憶と認知を阻むものを表していたのです。
映像の後半、壁の切れ目で男女は抱擁しますが
よく見るとそこはただの切れ目でしかなく、
すぐそこにまたもやガラスの壁が続いているんだよね。
壁の切れ目は本当の救いなんかじゃないのだ。
結局ふたりはずっと、そこに居るまま。

この曲は確かにある種のラブソングではあるのだけれど、
同時に物凄くペシミスティックでリアルなトーンを含んでいるのです。



-という、
ややしたり顔(ヤダねぇw)の余談から続けて総括します。

だらだら長々と書いてみて改めて感じたのは
Derek William Dickという人の胆力の強さです。
シリーズをざっくり読み返してみると
基本的に「別離」の歌ばかり歌ってるんですよね、この人。
ほんと、お前は井伏鱒二か!?と突っ込みたくなるくらい。
そしてその別れがプライベートであれビジネスであれ、
Fishは全く挫けずに次を目指して突き進んで行く。

そんな徹底的なリアリストでありながら
作詞表現に(異常に)長けているもんだから
アウトプットは示唆に富んでいて聴き手を唸らせてしまう。
これまさに芸を為す術を備えているってことですわ。
だからこそ上掲PVで見せた涙と
肩に乗った妻の手に触れる姿は(勿論演出を含みつつ)
Fishの「老い」を確実に感じさせるもので
なんともやるせない気持ちになりますことよ。

まぁ、いずれにしてもFishの音楽活動はこれで終わりです。
'70年代のプログレ全盛期に乗り遅れた僕ら世代に
リアルタイムでプログレを経験させたMARILLIONから始まって、
今日までずっと変わることなき僕のフェイバリットであり
もう新作が出ないとしてもこれから先ずっと旧譜を聴き続けるのだ。



…うーん、これちゃんとまとまってるかしら?
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こけつまろびつなんとかゴール [シリーズ作文]

Fishのシリーズ(本編)最終回です。
最終作が我が家に届いてから2カ月も経ってしまい
新譜の話題としてはだいぶ遅くなっちゃいました。
もう少し早く辿り着いている筈だったのですが、
そんな予測の甘さもまぁ、僕のやることだから仕方がない。



FISHのソロ その12

※関連エントリー '18年11月1日
 「PayPalが大活躍する'18年晩秋」

※関連エントリー '20年1月15日
 「今や華麗でなく、そして虚飾もなく」

※関連エントリー '20年3月24日
 「マスクするとメガネ曇るから外して、そんで目ぇが痒くて堪らない」

※関連エントリー '20年7月28日
 「久し振りにサブウェイ食ったら美味かったのでまた行こうっと」

※関連エントリー '20年7月31日
 「えー、もうお盆!?」

アナウンスからリリースまでが長かったので
待ってる間にちょこちょこ書いた作文が多いのです。

僕がFishの引退意向を知ったのは'18年の11月、
ニューアルバムからの先行EP〝A Parley With Angels”を
手に入れた頃のことです。
勿論物凄く残念だったけれど
あまり驚かなかったのは我ながら意外でした。
遂にこの人は自ら追求した音楽をやり尽くしたんだなぁ、
という納得感があったのね。
これ迄のシリーズ作文に記した通り
Fishが辿った音楽(と商業的闘争)の旅路は
大層波瀾に満ちたもので、しかしながらその時々に
標榜した目的地には毎回見事に到達していたのです。
特に前作で叙事に至ったのは聴き手が思うよりも
大きかったのではないかと想像します。
あれ、俺が歌いたいのはなんだったっけ?
という自問は確実にあった筈で、
その疑問が浮かんだ時点で
辞め時を意識したんじゃないかなぁ。

Weltschmerz / FISH / 2020
fishwltsmrz.jpg

アルバムの制作期間は都合3年を超え、
全10曲84分を2枚のCDに分けて収録する大作となりました。
お馴染みSteve VantsisとRobin Boultを主な共作者として、
Foss PatersonとJohn Mitchellもそれぞれ1曲づつ。
Calum Malcolmのプロデュースは〝13th Star”から3枚連続、
今回はSteve Vantsisと連名になっています。

スコットランド室内管弦楽団の演奏や
Mikey Owersのブラスアレンジ、
そしてDavid Jackson等の客演を交えつつ繰り広げられる
本作の音楽、歌詞はまさしく「集大成」と呼ぶにふさわしく
それぞれの楽曲に旧作のエッセンスが封じ込まれています。
それでも総体の音楽的ベクトルがバラけることはなく、
通底するのはやはり骨太のブリティッシュロック。

僕が特に好きなのは先行EPにも収録された
〝Waverley Steps (End of The Line) ”。
Fishはこれを叙事詩だと言いますが
僕にはそういう風には聴こえませんでした。
相変わらず解釈の難しい詩ですが
多分これは表面上ブレグジットのことを歌っていて、
だけれどもその裏に潜んでいるのは
「勝者なき闘争の果て」なのだと思います。

そしてもう1曲。



本作タイトル曲であり
アルバムの終わりを飾る曲でもあります。
自らのソロ活動(の動機と顛末)を
振り返ったと思しき歌詞には一縷の情緒もなく、
驚いたことに(それが具体的に誰かは定かでないものの)
未だ闘うべき相手に向かって牙を剥いているんだよね。
今は昔、〝Market Square Heroes”から始まって
ぐるーーーっと1周周ってこの曲に戻ってくるってのは、
ちょっとカッコ良すぎる気もしつつ
詩人、音楽家としてこれ以上ない見事な帰結だよなぁ。

フィジカルは通常版(CD2枚組)と
DX版(+Blu-ray)の2種類。
Fish最初で最後のBlu-rayメディアは盛りだくさん。
インタビューやPV(と、そのメイキング)、
'18年のイギリスツアーから抜粋された
本作収録曲(4曲)の映像。
そしてHD5.1chのオーディオトラックなどが
がっつり収録されていて見応え聴き応え充分です。
またDX版はトールサイズのハードカバー仕様で、
Mark Wilkinsonのアートワークも
たっぷり堪能できますから、
どっちかと問われれば断然DX版推しです。

本作に伴うフェアウェルツアーは
コロナによって全て吹き飛び、
しかしたった1度だけ、3月13日に行われた
ウォームアップギグの様子が去る12月4日から
YouTubeで配信(オーディオのみ)されています。
〝A Fish in the Lemon Tree”で検索してみて下さい。
Fishは「いま暫くの間」再びツアーに戻る可能性は
低いだろうと言っているので、状況が落ち着いたら
再開するんじゃないかと期待はしているのですが。
まぁどの道日本じゃ見れないだろうから、
指を咥えて地団駄踏むしかないんだけどさ(苦笑)。



-さて。以上でシリーズ本編は終わりです。
そして前回書いた通り、余談と総括でもう1作文しようと思います。
年内でなんとか完結すべく…いやぁ、約束はしませんけれどもw
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